従業員のエンゲージメントを維持しながら組織の目標を達成する方法

社内風景 従業員マネジメント

従業員エンゲージメントが高いと組織にどのような影響があるのか

従業員の仕事への自発的なやる気や意欲、自発的な貢献度をいくつかの角度で評価、数値化した指標、「従業員エンゲージメント」が昨今の人事用語として注目されています。
アメリカのコンサルティング会社の調査などから従業員エンゲージメントの高い企業は、離職率が低く売上といった目標への達成度も高いと言われています。

似たような用語で、「従業員満足度」という指標もありますが、従業員満足度は、その企業の福利厚生や給与などを含めた満足度合いのため、離職率には影響しますが、企業の業績向上との因果関係は薄いともいわれています。

具体的な調査について例を見ていきましょう。グローバルコンサルティング会社であるウイリスタワーズワトソン社は、2012年に行った調査「Global Workforce Study」で、従業員の「持続可能なエンゲージメント」が、企業の業績に影響するということを発表しました。

その調査の中で、通常の「従業員エンゲージメント」が高い企業の営業利益率は、低い企業と比較して高いことはさることながら、「持続可能なエンゲージメント」の高い企業は3倍にもなるということを明らかにしています。
同社によると、エンゲージメントを継続的に維持するためには「生産的な職場環境」「健全な就労状態」という2つの要件を挙げています。

エンゲージメントを維持するための5つのポイント

エンゲージメントを維持するために必要とされる「生産的な職場環境」と「健全な就労状態」の2つの要件を満たすために、具体的にどういったことに取り組めばいいか、5つのポイントに分けてみていきます。

①企業としての存在意義を明確化する

その企業が社会的にどういった意義をもって存在をしているのかを明確にしてください。売上目標のような目の前の目標だけにとらわれるのではなく、企業としてのビジョン、ミッション、バリューを明確に従業員に示しましょう。

②経営層、マネジメント層のリーダーシップを高める

リーダーシップはエンゲージメントの重要な要素ともいわれています。ここで言いたいのは、強いリーダーとしてトップダウンでやっていく、という意味ではありません。
経営層としては環境変化の多い時代の中、リーダーとして多角的な視点で決断をし、組織をあるべき姿へと導いていく、その環境下の中でベストな方向へと導いていくスタイルが必要とされます。

経営層がそういった方向を明確に示すリーダーシップが求められると、次にマネジメント層のリーダーシップも必要とされます。マネジメント層は、そういった経営層の決断をもとに、組織目標を達成するために部下をサポートしていくというスタイルが求められます。

経営層、マネジメント層の階層により、求められるリーダーシップスタイルが若干異なりますが、いずれも組織を引っ張っていく長として、それぞれの能力を高めていくことが必要です。

③従業員の能力を活かせる環境整備

任された仕事を言われた通りにやるだけでは、部下の能力を活かすことも高めることもできません。従業員の仕事への意欲を高め、活かしていくことで生産的な職場環境を作ることができます。
そのためには部下への権限移譲や、教育体系の整備といったことが必要となります。意思決定をゆだねられる権限移譲やスキルアップの機会となる教育の実施により、従業員の自信、さらなる能力向上へとつながります。

④ストレスマネジメントの実施

健全な就労状態を作るために欠かせないのが、ストレスマネジメントです。ストレスフリーすぎると仕事への意欲は低下しますし、かといって過度なストレスを感じすぎると、心や体を壊しかねません。
人事面談を年に1度行う、適切なストレスマネジメントについての従業員教育を行うなどして、従業員のストレス度合いを把握しましょう。
ウェブでできる簡易的なストレス度合いを測るツールなどもあるため、健康診断で導入している企業も多いです。

⑤ワークライフバランスの整備

2016年に「働き方改革」が提唱され、長時間労働の改善が課題となっています。また企業における女性の活躍推進も謳われており、時短や在宅といった流動的な働き方を導入する企業も増えてきています。
長時間労働の改善のために適正な業務量のバランスの見直しや、流動的な就労スタイルの導入で従業員の事情に合わせて柔軟な制度を取り入れることは、健全な就労状態へとつながります。

エンゲージメントを下げないために気を付けること

せっかくエンゲージメントを継続的に維持するために制度を導入するなどして環境を整えたとしても運用がうまくいってなければ意味がありません。
色々と導入したけれど結果的に根付かずに現場が混乱しただけだった、という結果にならないように、必ず導入した制度についてはフォローを行いましょう。

具体的には面談等で実態を把握する、外部の調査ツールなどでサーベイを行って運用状況を調べる、定期的な教育によって制度を根付かせるなどがあります。
一度立ち上げたらやりっぱなしとなると、結果的にはエンゲージメントは維持されません。

5つのポイントとして挙げた内容は、どれも取り組むにはエネルギーが必要となりますが、一気に行わずとも一つ一つ積み上げていくように意識してください。
業績アップ、売り上げという目の前の目標だけでなく、社会的な組織の存在意義を見据え、取り組んで行きましょう。