鬼速PDCAとは何か、その特徴とプロセスの解説

OKR・パフォーマンス

1.鬼速PDCAとは

鬼速PDCAとは何か、その特徴とプロセスの解説をしていきます。まずは鬼速PDCAについて解説します。鬼速PDCAと言うネーミングは株式会社ZUU代表取締役社長兼CEOの冨田和成氏が作った造語です。2016年の10月に「鬼速PDCA」として書籍で出版されました。

冨田氏の経歴を一部本書より引用すると、冨田氏は一橋大学卒業後、野村証券にて数々の営業記録を打ち立て、最年少で超富裕層向けのプライベートバンク部門に異動。その後シンガポールのビジネススクールの留学を経て、タイにてASEAN地域の経営戦略を担当。2013年に「世界中の誰もが全力で夢に挑戦できる世界を創る」ことをミッションとし、株式会社ZUUを設立。月間250万人を集める金融メディア「ZUUonline」や、投資判断ツール「ZUUSignals」で注目を集める。過去にGoogleやFacebookも受賞した世界で最も革新的なテクノロジーベンチャーアワード「Red Herring Asia Top 100 Winners」を受賞している。

そんな数々の栄誉をハイスピードで達成してきた冨田氏が実践してきた「PDCA」を、冨田氏自身が体系化したのが「鬼速PDCA」になります。


2.PDCAとは

始めに、PDCAとは何かおさらいしておきましょう。PDCAは業務改善の手法としてplan(計画)→do(実行)→check(評価)→act(改善)の4段階のサイクルを、PDCAサイクルとして継続的に回し続けることにより業務改善をしていくものです。ビジネスパーソンの方なら「もう言われなくても知っている」くらいに浸透している手法の一つです。PDCA

では実際に組織としてPDCAの教育はあっても、それがしっかりと機能している組織は一体どれくらいあるのでしょうか?現状に対して漠然とした不安や疑問等の課題は、ほぼ全員が感じていると思います。それをどう改善するかしっかり分析できている組織は少ないと思いますし、PDCAサイクルに落とし込み、実行まで行う組織はさらに少なくなるでしょう。なおかつPDCAは継続的に実行し、前進するための手法ですので、回し続けることが必須です。1つの課題をクリアしたので終了という簡単なものではありません。このプロセスを踏めないことにはPDCAを実行しているとは言えないでしょう。


3.鬼速PDCAの特徴とは

それではPDCAに対して、冨田氏の言う「鬼速PDCA」とは一体何なのか本書を参考に読み解いていくと、簡単に言ってしまえばPDCAを正しい理解のもとに、高速で継続的に回していくことになります。

「そんなことか!」と思わないでください。それほどPDCAとは馴染みの手法ではありますが、曖昧に課題解決の手順程度に捉えられていたりします。PDCAは決して楽に問題解決ができる手法というわけではありません。しかし、実践を重ねていくほど組織の成長はどんどん加速していきます。PDCAを鬼速で回し続けることで、成長スピードが今までとは段違いにアップするのです。

冨田氏が言う鬼速PDCAとは「「PDCA」を徹底的に回すこと」につきると思います。これを機会にぜひ鬼速PDCAの理解を深め、実践していきましょう。


4.鬼速PDCAのプロセス

それでは鬼速PDCAのプロセスを計画(PLAN)・実行(DO)・検証(CHECK)・調整(ADJUST)に分けて見ていきましょう。※鬼速PDCAではACTではなくADJUSTと言っていますので、ならってADJUSTで統一します。

  • 計画(PLAN)

まずは計画です。プロセスをステップごとに見ていきましょう。

ステップ①

ゴールを定量化する(KGI)。PDCAをまわすのにはゴールを設定するところから始めます。ゴール設定には3つのポイントがあります。1.期日を決めること。2.定量化すること。2.適度に具体的にすること。これはPDCAの精度を高くするのに必要で、期日では「いつか」などの曖昧なものではゴールへ向かう戦略も曖昧になります。定量化で言えば「痩せる」ではなく体脂肪-3%など数値化する必要があります。

ステップ②

次は現状とゴールとのギャップを明確にし、ギャップに対する課題を洗い出す。営業であれば「月平均5件の契約を2倍の10件にしたい」とゴールを設定したら2倍にしなければいけないとギャップを明確にします。

ステップ③

ギャップを明確にできたらそこに対する課題を見つけます。「プレゼンの勝率が悪い」「アポの件数が平均より低い」など洗い出していきます。

ステップ④

課題を洗い出すことができたら優先度をつけ3つに絞ります。絞る際は1.効果 2.時間 3.気軽さで判断します。

ステップ⑤

課題を絞れたら課題をKPI化(定量化)します。ここでもゴールを設定したときのように定量化し数字化します。「プレゼンの勝率30%から50%」といったように具体的に設定し、これがサブゴールになります。

ステップ⑥

KPIを達成する解決案を考えます。「プレゼンの上手い上司に同行する」「同僚にプレゼンし、フィードバックをもらう」など具体的なものを出しましょう。

ステップ⑦

解決案に優先度をつけます。ここまでくると、どれも重要なものになっているとは思いますが、全てに取り組み中途半端にならないためにも絞ります。ここでもステップ③のように優先度をつけて絞っていきましょう。

ステップ⑧

計画を見える化します。ここまでで基本的な計画は立てられたはずなので、あとは意識付けの為にポストイットを貼ったり、壁に貼りだしたり、意識付けの仕組みを作っておきましょう。

ここまででかなり現状より細かく計画が立てられたと思います。これだけでも鬼速PDCAの徹底ぶりが伝わりますね。

 

  • 実行(DO)

次に実行では、計画を業務に落とし込み、スケジュールを切って予定通りに実行するまでになります。実行の段階としては、まず計画で出た解決案に対するアクションを考えます。これを鬼速PDCAでは「DO」と表現しています。次に「DO」だけでは実際に行動に移しづらいのでタスクまで落とし込み、スケジュール化します。これを「TODO」と表現しています。では実行もステップで見ていきましょう。

ステップ①

解決案を実際のアクションDOに分解します。DOも1つのこともあれば、1日で終わる完結型や定期的に行う継続型と多数でることもあります。

ステップ②

DOに優先順位をつけ、やることを絞ります。このときの指標として「効果」「時間」「気軽さ」で判断します。

ステップ③

DOを定量化(KDI)する。本を1000ページ読むというDOだったら、読み切ったかどうかではなく、毎週200ページ読むといった具体的な行動目標にします。

ステップ④

DOをTODOに落とし込む。ここではスケジュール帳に書き込めるレベルにすること。「1カ月に1回会食に行く」であれば、いつ電話してアポをとるのか、いつ店を予約するのかまで具体的にします。

ステップ⑤

TODOの進捗確認をしながら実行に移す。1日数回の進捗確認を行いながら実行していきます。

 

  • 検証(CHECK)

検証の対象は、ゴール(KGI)・サブゴール(KPI)・行動計画(KDI)の達成率です。そして上手くいっていないのであれば、うまくいっていない要因を、うまくいっているのであればうまくいっている要因を突き止めます。

それでは検証のステップを見ていきます。

ステップ①

ゴール(KGI)の達成率を確認する。達成率はしっかり数値化し、何パーセント達成したかわかるようにすること。頻度ではKGIが一番少なく、月1回程度になる。

ステップ②

サブゴール(KPI)の達成率を確認する。「結果目標に対する達成率」になります。検証頻度に合わせて、あらかじめこの時点でどこまでの数値かを決めておくと検証しやすい。

ステップ③

行動計画(KDI)の達成率を確認する。予定通り行動ができたのかどうかがわかります。KPIはコントロールができなくても、KDIはコントロールできるので、KDIにより力を注ぐべきですし、大半の振り返りはKDIにあてられることになるでしょう。

ステップ④

できなかった要因を突き止める。ここが検証の1番重要なところです。ここでの要因の分析も「なぜ?」を繰り返して、深くまで入っていくことが重要です。

ステップ⑤

できた要因を突き止める。課題を考えると弱みばかりに目がいってしまうことが多いのですが、成果を出すにはいいところを伸ばしたほうが効果の大きいこともあります。ですので「できた要因」もしっかりと突き止めましょう。

この検証で課題を解決することで実行力が上がります。実行力が成果を上げますのでしっかり取り組みましょう。

 

  • 調整(ADJUST)

最後の調整では、検証の結果を踏まえて対応を検討し、次のサイクルにつなげる役割を担っています。PDCAを中止する判断もここで行います。鬼速PDCAでは調整結果を調整案と呼んでいます。

ステップ①

検証結果を踏まえた調整案を考える。ゴールレベルで調整が必要なのか、計画の大幅な見直しが必要か、解決案やDOやTODOレベルの調整が必要か、または調整不要かを考える。

ステップ②

調整案に優先順位をつけ、やることを絞る。ここで改めて「効果」「時間」「気軽さ」で優先順位をつける。

ステップ③

次のサイクルにつなげる。いよいよ最後です。PDCAは回し続けることが重要ですので次のサイクルに橋渡しをします。新たな課題に対する情報把握を行い、次の計画の立案に早くつなげることが重要です。


5.最後に

いかがでしたでしょうか?鬼速PDCAの徹底ぶりが伝わりましたでしょうか?今までのPDCAの考え方が足りないと感じた方もいると思います。私も改めてPDCAの難しさを感じたとともに、PDCAの可能性を感じました。ぜひ組織で活用してみて下さい。

冨田氏の鬼速PDCAでは、もっと具体的に例や応用事例も載っていますのでぜひ書籍も手に取ってみることをおすすめします。

Amazon『鬼速PDCA 単行本(ソフトカバー)』