システムエンジニアの離職理由と対策②人事管轄業務とそのフェーズにおける離職防止

HRテック

前回のブログでは、離職理由と対策の中でも、年代別退職理由と企業へのデメリットに対して詳細を書きました。
離職理由と対策①年代別退職理由と企業へのデメリット

今回は、人事管轄業務のおさらいと、そのフェーズにおける離職防止の詳細について投稿します。

人事管轄業務のおさらいと、そのフェーズにおける離職防止

一般的に人事業務に関しては、以下の5つあります。

Ⅰ:人材採用
Ⅱ:人材教育・育成
Ⅲ:人事評価
Ⅳ:人員配置
Ⅴ:労務管理

こう見ると人事の対応すべき範囲は多いですね。
一口に離職といっても様々な理由があるので、人事業務全般を俯瞰しながら事象を振り返る必要があります。

Ⅰ:人材採用時の離職防止について

面接の目的ですが以下の事項を確認する目的があります。
・営業や技術など、対応予定業務への潜在能力を含めた資質保有判断
・コミュニケーション能力の判断
・意欲の判断
志望職種に関するエネルギー量は適性検査ではみられないので、確認する必要があり、企業と求職者の相互理解などになります。

目的は上記ですが、はかる手段は、「面接とテスト」これ以外はありません。

・定量判断:テストは潜在能力を含めた情報処理能力、適性の数値によるチェック
・定性判断:面接では、熱意や業界職種への理解や経験

採用テストでは情報処理能力や職種適性、行動特性、メンタル強度がある程度ですが、読み取れます。性格診断も行うとある程度の人格までみえるでしょう。特に新卒の場合、「資質」を見抜くためにテストは行うべきと言えます。

これを行うことで、前回のブログであげたような入社0~2年目の退職事由①キャリア形成視点でのスキル不足、②メンタル強度のミスマッチを起因とした離職率を低下させることができるからです。

③社会人不適合者に関しては面接時でジャッジすることで判断できます。振る舞いや話し方などを参考にして人物判断するしかありません。

Ⅱ:人材教育・育成視点における離職防止

若手を中心とした新入社員、新卒社員に関しては研修や教育に関して実施しない会社は少ないかと思います。最近ではマネジメント層の研修も様々なサービスがありますね。
ここでは、人材教育・育成を行う理由を少し整理したいと思います。

①生産性をあげられる人材になってもらう

職務・職能知識を積んでもらうことで、会社の収益性に貢献してもらいたいことはいうまでもありません。研修の手段については、Off-JT(職場外研修)、OJT(職場内研修)、集合研修、イーラーニングなど様々ありますが、どの手段をとっても共通の目的として特定業務職種に対する理解をふかめ、その分野で生産性をあげてもらう事になります。

③社員同士、同期同士のエンゲージメントを強める

研修をうけているときに、同期同士、研修担当者、先輩社員と時間を共有することになります。教える教えてもらう、誰ができるできないなどありますが、有機的な関係が構築されます。仮に、リモートワークで行ったとしても、なれてくればWebミーティングで雑談などすることもあるでしょう。エンゲージメントの最初の段階といえます。

④会社の理念を伝えることで、個人の職業観を育む

多くの企業ではミッション、ビジョン、バリュー、企業理念など、上記の②と少し内容が重なりますが、それを企業ホームページで明記したり、熱く語ったりすることで浸透させている企業もあります。なぜその仕事が存在しているか、どのように自分自身が取り組むべきかなど、価値観を醸成する時間でもあります。その価値観の醸成は個人差があるにせよ、生まれることでその企業と職種に対するエンゲージメントが深まります。

人材の教育・育成はコストがかかりますが、専門性が高くなればなるほどその人材の採用が難しくなります。育てることで生産性や会社にかけがえのない人材に育てて行く、重要なプロセスといえます。

上記の複合的な観点からも人材教育・育成は、離職率低減の有効な手段と言えます。研修コストが無駄だ、とう見方もないわけはないですが、やらなければ社員成長もエンゲージメントも低下することになるでしょう。

Ⅲ:人事評価について

人事評価と人事考課に関して定義の違いがあるようですが、ここでは包括して人事評価として取り扱います。

人事評価を行う理由しては、離職から少し離れますが、
「企業の活性化と持続的な成長」
が最大の目的です。少しかいつまんでいくと、

①組織の目標達成を促進させる
②評価軸にミッションを具現化して明記することで、社員成長をサポートする
③給与・役職などの処遇を決定する

いづれにしても重要な事象です。社員定着においては評価では以下の事象が確認事項となります。

・まず人事評価を行っているか?
・人事評価が適切に運用されているか?

ここでいう適切とは、
  ・理念や行動指針と一致しているか、
  ・評価がある程度、または高い精度で反映されているか、
  ・成果、実績や貢献度などで反映されているか
などになります。

事業規模が小さい、一名で担当している業務等であれば、経営層やマネージャーの決裁者の個人裁量に委ねても良いでしょう。しかし、一定の規模の組織形態になる場合には、人事評価が必要かと思われます。それは、社員の成長性、処遇である労働生産性の分配が、機能不全になるためです。機能不全が高まれば高まるほど離職率があがることになります。逆に、機能的に有効性が高まれば、社員もやりがいを感じ、エンゲージメントが向上されることになります。ブラッシュアップを繰り返して、精度が高い人事評価になれば事業成長が促進される結果となります。評価実施も離職防止視点では必要性が高い事項と言えます。

Ⅳ:人員配置

人員配置は、社員を適材適所に配置し、事業計画戦略などにそった組織の目標達成のためにマネジメントを行うことです。

人員配置の目的は大きく
・企業の事業目標を達成すること
・社員成長を促すこと

になります。

人材配置が一定の成果がでれば、社員のモチベーションがあがるとともにエンゲージメントも高まることになります。そうなれば社員の自己成長にもつながることでしょう。

反面、リスクもあります。一次的にしても新たな仕事や人を含めた環境に慣れるまで時間が必要です。どんなに能力が高い方でも習熟期間がある程度は必要となります。

他のリスクが高いこと事象として、
・望まない職種に配置してしまう(当人の希望)
・適性や能力が合わない業務につけてしまう(スキルのミスマッチ)
・相性の悪い人同士をつけてしまうこと(人間関係のミスマッチ)

上記いずれかの事象、または複数の事象に該当するようなことがあれば、生産性とモチベーションが低下することは目に見えています。当然のことながら離職率もあがることでしょう。

とあるメガバンクの出身の人事のお話ですが、人材の配置転換が月に100人以上あり、その配置転換について毎月配置転換の根拠を社長に報告していたそうです。

その際に配置転換の根拠を求められる際には、
「その社員にはキャリアがあり、家族があり、親戚がいて、家がある。それを一人一人考えなさい」
といわれたそうです。

今ではHRテックツールも豊富にあるので、性格診断テストを導入して社員同士の相性をDBなりAIなりで判断することもできるますが、キャリアや仮に転勤などを含むとなると1on1なり、社員からのヒアリング内容を共有化するなどして地道な人員配置決定を行うしかありません。

ここは経営層や人事責任者の想いが重要かもしれないですね。キャリアと組織のミスマッチをなくすためには泥臭く地道なヒアリングと共有化が必要となります。

Ⅴ:労務管理

労務管理ですが、
・勤怠、給与計算、労働時間管理
・社会保険手続き
・福利厚生、全衛生管理、就業規則管理
などになり、人事管理のように人事評価や配置にかかわる業務ではなく、従業員が安定して働く役割のことです。

先述したⅠ:人材採用 Ⅱ:人材教育・育成 Ⅲ:人事評価 Ⅳ:人員配置は「人事管理」となり、企業単位の中で最適解を求めるものです。

反対に、労務管理は、労働基準法や雇用対策法、職業安定法、男女雇用機会均等法など、法律が複数存在し、企業としてはそれに則った運営が求められます。コンプライアンスの遵守とよく言われますが、上記の各種法律などもその範囲に含まれます。

最近の若者はよく権利意識が強いね、など耳にしますが、よくよく彼らのいうことに耳を傾けてみると、コンプライアンス遵守について求める声が少なくないかもしれません。

各種法律は細かいです。その他法律にも人材派遣法、労働安全衛生法、厚生年金保険法、健康保険法、パワハラ防止法など、対応すべき範囲はとても広く、全部を理解記憶している労務管理者はまずいないでしょう。全てにおいて努力義務規定の罰則のない法律などを含めれば、社歴の古い大手企業含めて全て守れている企業は無いかもしれません。

範囲は広いですが、社員視点・離職防止視点で必ず守るべきポイントがあります。

第一守るべきものは、時間とお金に関するものです。ここは特に権利意識が集中しやすいポイントとなるので、コスト視点だけで運営するのではなく、労働基準法に則った形で就業規則や賃金規定を作成し、企業防衛と社員に対する理解を求め続けるべきポイントになります。スタートアップ企業でもすぐに対応するべきでしょう。離職だけではなく、あとあと知らないでは済まされないトラブルにもなりかねません。

ですが、意外にも一番多い労務トラブルは、社内いじめ・ハラスメントがどの資料をみても多いようです。有機的な関係のなかで起こることなので、どこからどこまでがいけないのか、個人差はどの程度あるのかは個々の事象や人によってかわるものですが、統計として悪質なコミュニケーションがトラブルになりやすいことだけは注意すべきです。

この事象に関しては、正直採用する人材の特性やレベルもあると思います。他に防ぐ手段としては、

〇方針の策定と労働者への周知・啓発、相談窓口の設置、
〇社内研修の実施、社内アンケートの実施
〇再発防止のために企業が講ずべき措置

などがよく言われます。

他には人的な成長を促すために、クレド(行動指針)などを作成することが対策としては上げられます。会社を国にハラスメントを犯罪・治安と例えるなら、法律と警察機関を整備しても、国民性が著しく低く治安が悪ければ国家の安泰はありません。そのためには義務教育整備などが必要で、会社に当てはめるならクレドや行動指針などが人的教育になります。ハラスメントではなくても、業務上の悪質な服務規律違行為はあります。

そのためには、ミッション、ビジョン、バリュー、クレドなどが必要になってくるといった背景があります。ハラスメント企業風土は規律性を明示することも重要ですが、いわゆる人的関係や労働目的等を明確化させてあげることも防止につながるでしょう。

さいごに

企業規模が多くなればなるほど、離職というリスクが高くなるのは間違いないです。以下に割合を減らすことが大切かと思います。社内アンケートやエンゲージメントツールをただ使うだけではなく、在職している方、そして離職される方の心のペインや考えなどをヒアリングし、対策を反映することが大切です。これは人事だけで解決する話ではなく、現場の方々、時に経営層も巻き込んで課題解決していかなければなりません。

昨今HRテック市場が拡大し、エンゲージメントツールがあふれ初めていますが、HRテックそのものに離職率を下げる魔法のツールは一つもありません。働いている方々の声をツールを使うことでキャッチアップし、採用フィルター、人材の教育育成や評価配置、労務管理の人事諸事項に課題解決策を実施することで離職率が低減していきます。

CHROや人事担当、経営者方々は、HRジャーニーの最中とお察しします。経営管理層を含めた社内ステークホルダーの方々の説得理解を行いながら離職率低減を実現し、企業経営の効率化がなされることを切に願います!