eNPSとは?eNPSと社員の生産性や離職率の関係性を紐解く

ビジネス 従業員マネジメント

eNPSとはなにか

eNPSとは従業員の自社に対するロイヤルティを数値化したものです。これまで従業員の働くモチベーションについては従業員満足で測ることが多かったのですがeNPSによってより詳しく従業員の会社への参加意識を計測することができます。

もともとはNPS(顧客ロイヤルティ)というものがあります。これは「あなたは〇〇(商品やサービス)をどの程度親しい友人や家族に勧めたいと思いますか?」という質問をすることで推奨度を調べることです。推奨してくれる人はリピーター、ファンということです。顧客のロイヤリティを図る手法としてのNPS(Net Promoter Score)を従業員 (Employee) 向けに応用したことが始まりです。この質問を従業員に置き換え「あなたは現在の会社で働くことをどの程度親しい友人や家族に勧めたいと思いますか?」という質問を行います。これにより従業員の職場の推奨度を測ります。

eNPSの計算方法

eNPSは0~10点の点数をつけることで評価します。「あなたは現在の会社で働くことをどの程度親しい友人や家族に勧めたいと思いますか?」という質問に対し0~6点をつけた人は「批判者」、7,8点は「中位」、9,10は「推奨者」とランク分けします。そして推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたものがeNPSです。たとえば批判者が30%、中位が20%、推奨者が50%だったとします。この場合50%-30%=20がeNPSです。当然ながら推奨者が多いほど数値は上がる仕組みになっています。

eNPSと従業員満足度の違い

よく耳にする従業員満足度(ES)とeNPSにはどのような違いがあるのでしょうか。従業員満足度の調査では「仕事の質・量に満足か?」「社内コミュニケーションは円滑か?」など自分と職場の観点から回答する質問で構成されています。これに対しeNPSでは「自分の職場を親しい人たちに勧められるか」というところから始まります。これは本当にいいものしか人に勧められないという意識が働くため、従業員満足度の調査よりもより正確に従業員のロイヤルティを測ることができます。また自身が本当に良いと感じたものしか人には勧めにくいという心理もあり、自分と職場とを一体のものと考えやすくなります。

従業員満足度の設問に対する答えがあいまいなものや画一的なものになりがちなのに対しeNPSの調査は職場を自分に置き換えて考えることでより具体的かつ主体的なものとなり、職場環境の実態を知るには最適です。

eNPSの重要性

eNPSを計測することで従業員の会社への帰属意識を掴むことは経営課題の解決に向けて非常に重要です。従業員満足度とはいまの会社に満足しているかを測ることです。ある従業員が会社に満足していたとしても、もっと満足できる会社が現れたらその従業員は退職を考えるでしょう。あるいはある部分においては満足しているが、他の部分での不満が溜まった場合も同様です。従業員にとって会社やそこでの働き方に満足はしていても会社自体は代替性のあるものに過ぎません。たとえば仕事の成果は素晴らしく上げている人がeNPSで批判者であったらどうでしょうか。問題を洗い出すことができるので優秀な人材の流出を防ぐこともできます。

eNPSを高めることは従業員が会社のことを自分自身のこととして考え始めることにつながります。会社を変えの効かないものと認識することで自分と会社を向上する方法を考えるようになります。仕事内容や給料、福利厚生などに関する質問項目を通じて従業員のロイヤルティを高めるためのよりダイレクトな方法を探ることもできます。

離職率の低下を実現することができる

企業の衰退を招く要因の一つに人手不足があります。優秀な人材の流出や採用が困難であることは競争力を保つ上で避けたいところです。eNPSにより正確な職場環境と会社に対する従業員のロイヤルティを知ることでどこに問題があるのかを洗い出すことができます。特に会社に不満を抱える批判者に分類される人たちがどのような問題を抱えているのかを分析する上で必要な統計をとることもeNPSでは可能です。

また「あなたは現在の会社で働くことをどの程度親しい友人や家族に勧めたいと思いますか?」という質問を採用面で実践するケースもあります。それが家族や友人の紹介制度です。わざわざ求人広告を出す必要がなく、従業員からの事前に人間性や職務遂行能力に関する情報を得ることもできるためいわゆる「ハズレ」を引く確率も大幅に減らすことができます。このことは人事採用におけるコストと工数を大幅に削減できることを意味します。

eNPSを生産性向上に活かす方法

もちろんeNPSを高めることで得られる効果は職場環境の整備にとどまりません。従業員が自身と会社を一体のものとして考えることでより質の高いサービスや商品の開発に主体性を発揮することも期待できます。なぜなら会社が評価されることは自分が評価されることであり、そのため仕事にやりがいやモチベーションを見出すことができるのです。自社に愛着を感じるからこそ、顧客に喜ばれるサービスを追求し、社内で建設的なあるいは創造的な提案をすることができます。さらにeNPSが高い従業員は周囲を巻き込んでいくポジティブなパワーがあります。このことはチームとして動く会社という組織では欠かせない力です。このようにeNPSを高めることは企業の生産性を高め収益を伸ばすことにも貢献することができます。

eNPSで満足を見えるかたちにする

従業員満足度というのは心の中の気持ちです。外からは見えづらく、また不確かなものでもあります。eNPSはそれを見える化して統計的に測ることでこれから会社が向かうべき方向を決めるための指針にもなります。