生産性を伸ばす人事制度導入に必要なこと

スマートに仕事 従業員マネジメント

あなたの会社では生産性を意識した働き方ができていますか?

生産性は「生産性=労働力(生産力)÷労働時間」で定義されます。ですので、生産性を一言で上げていくといっても、そのどこを変えていくかで対策も異なってきます。一般的に生産性を上げていくと、労働時間を減らしてって結果を観測し改善を図っていかなければなかなか結果を得ることはできません。

今までの日本社会では、根性論に基づき会社のために全力で働くことこそが大事という論調で語られてきた節があります。基本的に時間外労働は辞さず、社員は身を粉にして働くことで一生を捧げるスタンスこそが正しく評価される、という形で生産性は労働時間を如何に伸ばすかで担保されてきました。

しかし、現代では働き方改革で代表されるように、個人のプライベートを尊重した人間らしい生活を送れるように働き方を見直すべき、というように労働時間を増やすのではなく、一人あたり労働時間を減らすことで成果を創出するにはどうしたら良いのか、にフォーカスして議論がなされるようになってきました。本日は現代の流れに沿って生産性を上げていくにはどのようにしたら良いのか、紐解いてご紹介します。


なぜ、労働力担保で生産性を上げていくことが見直されるようになったのか

では、なぜ労働力の担保が見直されるようになったのか、その背景を紐解いてみます。主な原因は2つあります。

人口減少の問題

日本は2010年を境にしてそれまで増え続けていた人口が減少に転じました。特に首都圏以外の地方都市では顕著で2050年までに約4,000万人は減少してしまうといった試算もされているほどです。行政を中心に危機感は全国に波及し、現在では「地方創生」というワードをもとに多額の予算を投じて各地域の魅力をプロモーション、移住者促進に向けて全国で盛んに取組みがなされています。当然ながら人口が減少してしまうと困るのは行政だけではありません。企業も労働力を担保しようにも人材を採用できなくなってきます。

それまでは買い手市場で特に広告にお金を掛けずとも応募が殺到していたのは今も昔、有効求人倍率は高いところで4倍以上を記録し過去最高の数値で推移しているのです。労働力を人材で担保できなくなった今、今までと同様に一人あたりの労働時間を上げ続けると一人あたりに業務が集中しすぐに消耗してしまう、健康を概して勤務できなくなってしまうと困るのは企業であり業績にも大きく影響するために見直しを迫られているのです。

若手社員による自傷事故の多発

大手を中心に今までと同じような風土で若手に多くの業務を集中させて満足に帰宅もできてない、休み出勤させるということが続いた結果、精神的に問題をきたし自らの命を絶ってしまう問題が後を絶たなくなりました。

その結果、大きな社会問題としてニュースでも大きく報道されるようになり、一度発生してしまうとその企業のブランドを大きく毀損してしまうために早急に対策を進める企業が多くなりました。代表されるのが残業時間の見直し。今までその日の勤務時間は個人に委ねられていましたが、20時に強制退社させるなどの対策をとる企業が増えてきたのです。


教育するのではなく、意識を変えることで生産力を高める

前章でも挙げた企業の対策として強制退社を挙げました。実はこの強制的に労働時間を短縮することは生産力を高める上で大きな効果があるのです。一見すると単純に労働時間が大幅に削減されることで営業時間が減り、売上に直結するように思えます。

しかし、この労働時間の短縮は社員の意識を変え時間が減った分どのようにすれば変わらない成果を挙げることができるのか、自分で考えるきっかけを作ることができるのです。労働時間が制限されることで売上減少に繋がるかもしれないという危機感を抱くのは企業だけではありません。社員自身も売上が下がってしまうと自身の成果が減り、評価自体も悪くなってしまうため、社員も考え動く必要に迫られるのです。

また、時間だけでなく営業日そのものを削減するという人事制度を取り入れた企業もあります。IT企業のYahoo!japanはそれまで週休2日制から、金曜日を休みとして週休3日制度を導入しました。この結果、時間に加えて営業日そのものを制限して社員の更なる質の向上を目指しているのです。量を無理やり制限することで社員も質を大幅に高める、このような人事制度の導入は1人あたりの生産力を高める上で単純ながらもとても効果的と言えます。


一人ひとりの生産力を高める動きは社員に幸せをもたらし好循環を生む

労働時間の制限、労働日の制限は会社の生産力を高めるきっかけになるだけでなく、社員に幸せをもたらすという結果にもつながっていきます。

これは仕事以外に使える時間が大幅に増えることで趣味に費やす時間や家族と過ごす時間が大幅に増えることで人生が充実してくると考えられるからです。社員の人生が充実してくれば、モチベーションは当然向上すると考えられるため結果として仕事にも良い影響を生んでいく、そして質はさらに高まり会社の業績向上にも繋がっていくという好循環が生まれるはずであり、結果として会社、社員双方に大きなメリットに繋がっていきます。

欧州諸国ではこのような考えが一般的です。自分が幸せでなければ働く意味などない、自分の時間を削ってまで働くことに意味など無い。そこで限られた時間の中で最高の結果を生みパフォーマンスを維持しているのです。戦後、経済復興のために「働く時間」「労働できる生産人口数」で違いを生み経済大国として成り上がった日本もここからは一人ひとりの人生という尺の中で働き方を見直す時代に差し掛かっています。企業はこの時代に沿った社員の意識を変えることができる人事制度を取り入れることを念頭に経営を進めていくことが大事なのです。