ノーレイティングを導入する企業の理由とその後の評価制度対策

従業員マネジメント

従来の定期的に行われていた人事評価制度を廃止しノーレイティングを導入する企業が増えています。現代企業の抱える多くの課題を解決するものとしても認識度が上がっているようです。ここでは、ノーレイティングが導入される理由、導入のメリットをお伝えします。アメリカの先進企業が行うノーレイティング対策の事例もご紹介します。

ノーレイティングとは?

半年や1年ごとにその期間のレビューを行ない、それをもとに社員をランク付けし、昇給や昇進に反映させるというのが従来の評価制度でした。ノーレイティングとは、このランク付けを廃止した制度のことです。人事評価自体を全面的に辞めるという意味ではなく、ノーレイティングを導入するにあたっては効果的な評価につなげるための制度改革が必要です。

ノーレイティングを導入する理由

アメリカの先進企業や大企業がノーレイティングに踏み切っている理由は、1年ごとなど長期で行なうレビューの無意味さやランク付けの尺度が現代の人材の多様化にフィットしなくなっていると認識され始めたことにあります。

ウィリスタワーズワトソンの調査では、人事評価を行なう社員の45%は評価制度に価値を見出していないという結果が出ています。CEBの調査によるとマネージャーが部下の評価にかけている時間は年間で210時間にも及ぶそうです。デロイトの調査では、人事幹部の58%が、評価制度における業績レビューはマネージャーの時間の使い方として有効ではないと考えていることがわかりました。仮に、人事制度を社員の昇給や昇進を決めるためのものと位置付けたとしても、長いスパンの評価の信ぴょう性も問われています。

長期間にわたる過去の業績を振り返ることは、伝統儀式でしかなく、社員の創造性の発揮を妨げ、大量の事務作業を生むだけで、真の目的に寄与するものではないという見解が広がっているのです。

ノーレイティング導入のメリット

ノーレイティングを導入する企業は、さまざまな期待を持って制度を取り入れています。人事評価についての取り組みを、現代の企業が抱える問題や課題を解決する経営戦略と位置付けているのです。

毎日の業務も一定期間が過ぎればレビューでランク評価されることになります。自分の成果が他の社員より低ければ、どんなに頑張ってもランクは下がる可能性を意識するようになります。他の社員へのサポートや支援が他の社員の成果となるなら、協力を控え、自分の仕事に注力する意識が生まれるでしょう。ランク付けを廃止することは、チームワークを強化し、全体的に組織力をアップさせる期待が持てるのです。

チームワークが強化されることで、各社員が強みを活かし、それぞれの強みを融合させることで生産性を上げることができます。一人で抱えれば時間が余計にかかることも、強みでの分担ができれば、短時間に質高くこなしていけるのです。

長いスパンの業績レビューでのランク付けを廃止することで、人事評価の正確性が増し社員の納得度が高められます。いつの何に対しての評価かわからない評価や制度内容の不透明さがもたらす、不公平感、不満、モチベーションの低下を防ぐことも可能になります。

ノーレイティングの導入企業の対策

ノーレイティングを導入する企業は、ランク付けに代わる評価指標が必要になります。各社がどんな対策をとり、どのように評価を進めているのかいくつかの対策事例をご紹介します。

コミュニケーションを促す1on1

1年に1度などの長期スパンの評価が機能しないとなると、社員と社員の身近な存在であり評価者でもあるマネージャーとのコミュニケーションを活発化させることが課題となります。そこで取り入れられているのが1on1ミーティング。適切な「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」によって行なわれる手法です。

1週間に一回もしくは隔週などの短いスパンの対話で、進捗、問題、達成度などをチェックし、その都度、目標に対しての必要な修正や改善だけでなく、バックアップも可能になります。これが1on1ミーティングの大きな目的です。この情報の蓄積が最終的な人事評価の際に大いに役立つことになるのです。日頃からコミュニケーションは心掛けているマネージャーでも、この1on1ミーティングを活用することで生産性の向上や部下育成効果も上げられています。

人事制度の透明性を出すOKR管理

ノーレイティングを導入する企業の中で、個々の社員の目標や進捗、その達成度を全社員で共有するOKRを採用するところも多いです。誰が何に取り組み、どのくらいの成果を上げ、企業目標に対しての貢献度も明らかになります。その結果をもとにして人事評価をしていけば、個々の社員もその周りも納得がいくのです。

まとめ

ランク付けする年次評価とノーレイティングの一番の違いは、視点を過去にするか未来にするかという点ではないでしょうか。過去の業績に対して付けられるランク評価は、未来に活きる程度が低いようです。対してノーレイティングにすることで未来への期待が高められます。日本の習慣や日本人の特徴により、ノーレイティングを良しとするかには賛否両論あるようですが、メリット項目の必要性は日本企業も急務としているはずです。一考の価値はありそうです。