年次評価制度を辞める企業が続出!ノーレイティングが広がる理由とは

従業員マネジメント

毎年の年次評価を辞める企業が増えているようです。恒例となっていた人事評価の在り方について、なぜ現代の企業が辞めると判断しているのか、その理由を探ります。評価制度は人事戦略や組織強化にも大きく関わり、その成否を左右しているという認識が高まっているようです。

理由1 労働市場の逼迫!年次評価のやり方がキーポイント?

転職が一般化し、働き方も多様になった現代、労働市場の急回転が続いています。社員の離職率が高まり、定着率が低いことは多くの企業が抱える問題となっています。この定着率の低下の理由については、時代背景をよく読み取る必要がありそうです。

頼りはミレニアル世代

現代の企業の従業員の多くを占めるのがミレニアル世代。自分が認められることを求める意識が強い特徴があるといわれています。例えばSNSなどでも、よい自分を開示して周りや社会からの「いいね!」の獲得に注力する若者も多く見られます。

この心理は仕事にも影響しており、求める承認を感じられない企業で働く社員は転職を考えやすいといわれています。年次評価での承認に果たしてどれくらいの効力があるかが問われているのです。

生産性が上がらない要因

ミレニアル世代は、小さな頃からIT技術に触れて育っています。すばやく、容易で、シンプルな反応を受けることが習慣の中に根付いています。その反応によって過ごしてきた彼らにとって、年次評価以外の時間は反応がないということに値するといっても過言ではありません。反応が得られないと感じる彼らの毎日の業務におけるストレスやプレッシャーが生産性にも影響を及ぼしているといわれています。

成果給の弊害

物価上昇が続いている現代で、昇給をどれだけ行えるかという難題は消えません。さらには年次評価の段階で成果を適正、かつ公平に査定できるのかという疑問視は拡大しています。当たり前のように行われれる年次評価のランク付けや相対評価。周りの社員の成果にも左右される自分の昇給や減給に納得できないと感じる社員は多いといわれます。

理由2 業務環境の短期化や変動が著しい

第2の理由としては、事業やプロジェクトにおける現代の特徴が挙げられます。スピード化も進む現代で、事業やプロジェクトを、以前より短いスパンで完了させることが望まれる傾向は高まる一方です。さらには急激な社会情勢や市場の変化は、事業やプロジェクトの途中であっても変更していかなければ適応できなくなっています。

年次評価を基準にすることが困難

上記のことから、年間を通しての業績や成果を総体的に評価する年次評価が機能しなくなっているとの見方が強まっています。同時に、年初における目標設定や期待値についても明確に定めていくことが困難となっているのです。短いスパンでの評価の繰り返しで対応していくべきという見解が広がっているようです。

理由3 年次評価が組織弱化の要因?

年次評価を受けた直後に辞職の意向を示す社員も多いようです。納得のいく評価が得られないという信頼やモチベーションの欠如が基になっています。組織形成の上でも重要な課題といえるでしょう。

チームワークを醸成しにくい環境

年次評価で個人の実績や成果だけの評価となる場合、個人主義の業務スタイルが蔓延してしまいます。周りの成果が上がれば、周りの評価向上に加担するという意識だけが社員に生じてしまいかねません。つまりチームワークが醸成されていかないということです。

不透明、不公平感情が広がりやすい

周りの社員の昇給や昇格に対して、仕事内容や成果に対して疑問視する社員も出てくるようです。
こんなに頑張っているのに、なぜあの人だけが評価が高いのかという不公平感、自分の評価が低いのはなぜかが分からない不透明感が出やすいのが従来の年次評価の特徴だったのです。

ノーレイティングの広がり

上記で紹介した問題点を分析し、世界の先進企業ではノーレイティングを導入する企業が増えています。長いスパンの定例評価で社員のランク付けを廃止するという手段が選択されています。

この評価の変革は、単に評価の仕方を変えるということだけでなく、社員やマネージャー層の業務の進行にも影響を与えるもので、その仕組みづくりも重要となるようです。ノーレイティングを導入する企業は、人事評価を人事業務とするのではなく、経営や人事戦略と位置付けて組織ぐるみの改革に取り組んでいます。

年次評価を辞める企業は、人材を評価すること自体を辞めているわけではありません。まずは、自社の人事評価が社員のモチベーションの向上や従業員エンゲージメントを高める効果を得るものとなっているかを認識する必要があるでしょう。機能していないのであれば、どの点が主な理由になっているのかを検討し、ときには組織ぐるみの人事評価の改革も必要といえるでしょう。