OKRが浸透しない理由 -OKRに向いていない企業例(トップダウン型の企業)-

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OKR(Objectives and Key Results)とは、目標設定や目標管理の手法で、企業やチーム、個人が、全力で同じ重要課題に取り組む際に効果的だと言われています。

しかし、効果的だから取り入れるというだけでは、効果は期待できず、かえって組織内に混乱を招く可能性があります。
自社の文化や特徴、組織体制をよく考えながら取り入れる必要があります。

特に、日本の企業ではOKRは浸透しにくいと考えられてきました。

日本の企業でOKRが浸透しない理由の1つとして、様々な背景があります。
今回は、トップダウンの意思決定文化が残っているということに焦点をあてていきます。

トップダウンのメリット・デメリット

もちろん、トップダウンが悪いというわけではありません。ここでは、トップダウンのメリット・デメリットを整理していきます。

メリット

迅速な意思決定
決定権が上層部に集中しているため、決定を下すプロセスを迅速に進めることができます。特に緊急の対応が必要な場合や、企業の方針や方向性を明確にする際に効果的です。

一貫性のある方針の保持
上層部が組織全体の戦略や方向性を決定するため、全体で一貫性のある方向性が保たれやすくなります。全体の混乱が避けられ、組織として全員が同じ目標に向かって進むことが可能になります。

責任所在の明確化
トップダウン型では、意思決定の責任が明確になるため、責任所在が曖昧になることがなくなります。

経験と専門知識の活用
経営者や上層部には、豊富な経験と専門知識があるため、問題に対して適切な判断が下される可能性が高くなります。特に戦略的な決定が必要な場合、トップダウン型が効果的です。

デメリット

現場の意見が反映されにくい
トップダウン型では、意思決定が上層部に集中するため、現場の声や一般従業員の意見が十分に反映されないことがあり、現状に対し不適切な判断が下されるリスクがあります。

現場のモチベーション低下
現場の従業員が意思決定に関与する機会が少ないと、意見が尊重されないと感じ、モチベーションが低下することがあります。これにより、従業員のエンゲージメントが低下し、長期的なパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。

柔軟性の欠如
現場に携わる下層部の従業員は、上層部からの指示が降りてくるまで行動が制限されることが多いため、組織が急な変化や新たな課題に迅速に対応する柔軟性が欠如していることがあります。

創造性とイノベーションの抑制
自発的に新しいアイデアや提案を出す機会が少なくなりがちなため、従業員の創造的な発想やイノベーションが抑制され、企業の成長や競争力に悪影響を及ぼす場合があります。

情報の停滞
上層部に情報が集中しがちなため、現場からのフィードバックや問題の報告が遅れる場合もあります。情報の停滞により、問題が拡大する前に対応することが難しくなる可能性もあります。

トップダウンの意思決定には、迅速な決定や一貫性のある方針といったメリットがある一方、現場の声が反映されにくく、柔軟性やイノベーションが抑制されるといったデメリットも存在します。
状況によってはトップダウン型が有効な場合もあるので、一概にトップダウンが「悪い」というわけではありませんが、OKRは、「全社員が目標設定に参加し、自己管理を促進することを目指す」というフレームワークなので、トップダウンの文化がある企業のデメリットをみると、OKRは浸透しにくいと考えられます。

トップダウン型の企業が変化している理由

しかし、日本でトップダウンの傾向が減少、または変化しています。要因として、いくつかの社会的、経済的、文化的な要因が関わっています。

グローバル化の進展
日本国内企業であっても、国際的な市場での競争に直面しています。グローバルなビジネス環境では、迅速な意思決定や現地のニーズに対応する柔軟性が求められるため、トップダウン型の意思決定では限界が生じてしまいます。その結果、現場に近いところで意思決定を行う必要性が高まり、ボトムアップのアプローチが増えてきています。

多様性の受容
企業ではこれまでの均質的な組織構造から、多様なバックグラウンドや価値観を持つ社員を受け入れる方向に進んでいます。
この多様性は、従来のトップダウン型の意思決定ではなく、多くの意見を反映した意思決定プロセスが必要とされる要因の一つとなっています。
多様な意見を取り入れることで、企業はより創造的で革新的な解決策を見出す機会が増えました。

労働市場の変化
ミレニアル世代やZ世代は、従来のトップダウン型の意思決定に対して疑問をもったり、抵抗を持つことが多いようです。若い世代では、意見が尊重され、自分の役割が組織全体に貢献していると感じられる環境を求める傾向があります。このため、企業は柔軟で協力的な組織文化を取り入れる必要に迫られています。

技術の進化と情報の民主化
デジタル技術の発展により、情報が組織内で広く共有されるようになりました。また、現場の社員がより多くのデータや知識にアクセスできるようになっています。これにより、現場レベルでの迅速な意思決定も可能となり、トップダウンの必要性が減少しています。さらに、テクノロジーはチーム間のコミュニケーションを促進し、横断的なコラボレーションも困難ではなくなってきました。

イノベーションと競争力の強化
企業が市場で競争力を維持し、成長を続けるためには、イノベーションが不可欠です。イノベーションはしばしば現場から生まれるため、社員全員が自由にアイデアを出し合える環境が必要とされます。企業は、イノベーションを促進するために、トップダウンからフラットでオープンな組織構造へとシフトしています。

働き方改革の影響
日本では近年、働き方改革が進められており、労働環境の改善や柔軟な働き方が奨励されています。この動きに伴い、従業員が自律的に働ける環境づくりが進んでおり、トップダウン型の管理手法が見直されています。より自律的な働き方を実現するためには、現場の裁量を尊重し、社員一人ひとりが意思決定に関与する必要があります。

経営環境の不確実性の増加
経済や技術の変化が急速に進んでいるため、企業は以前にも増して不確実な経営環境に直面しています。このような状況下では、従来のトップダウン型の意思決定が遅れやすく、変化に迅速に対応することが難しくなります。結果として、企業は現場の知見を活かし、迅速に対応できるフラットな組織構造を採用する傾向が強まっています。

日本でトップダウンの傾向が減少している理由として、グローバル化、技術の進化、働き方改革、そして若い世代の価値観の変化などがあげられ、さらに複数の要因が絡み合っています。その変化に適応するために、より柔軟で参加型の意思決定プロセスが求められ、多くの企業が従来のトップダウン型を見直しはじめています。

トップダウン型の文化が変化すると企業の成長に目標管理のOKRが効果的になる?

前述にあげたように、トップダウン型もメリットは多くあるので、変えなければならないというわけではありません。適切な場面で適切な意思決定スタイルを選択できることが理想だと言えるでしょう。

大切なのは、時代とともに企業も変化していく必要があるということです。
下層の社員が自ら意見を出し、目標を設定する文化を根付かせるためことが必要で、その過程でOKRの目標管理が適し効果的かもしれません。

しかし、効果を期待すると同様に、現場の社員の負担も考慮しなければなりません。
次回は、「OKRが浸透しない理由 -OKRに向いていない企業例(整合性と優先順位の調整)-」で、OKRを効果的に浸透させる対策で具体的にどのようなステップを踏む必要があるかを記載します。