人事評価制度は、適材適所の人員配置や、能力開発の基礎になる制度です。
しかし、人事評価制度の導入がされていない企業も多くあります。
厚生労働省が実施している令和2年度「能力開発基本調査」の結果では、職業能力評価を実施している事業所は、企業規模30~49人の場合43.5%、50~99人の場合は49.0%。企業規模1,000人以上の事業所は62.2%が実施されていると公表されています。
企業規模が大きいほど評価制度の導入率が高く、中小企業は大企業に比べ、人事評価制度の整備が進んでいない傾向にあるということがうかがえます。
しかしながら、従業員数が少ない企業のほうが一人ひとりの社員が会社に与える影響力が大きく、導入効果が高くなることから、中小企業こそ導入のメリットが高くなると言えるでしょう。
人事評価制度導入の目安
従業員数の増加
一般的に人事評価制度が必要とされてくるのは、従業員数が30人を超えたくらいからと言われています。
経営者が、従業員一人一人の顔と名前を一致させつつ、仕事ぶりに目を行き届かせ評価を行うのは困難になりはじめるからです。
従業員側から見ると、人事評価制度が整備されておらず経営者の感覚的なものである場合、本当に正しい評価がされているかどうか不満も感じるようになります。
働き方改革を進める
働き方改革関連法は、労働人口の減少や少子高齢化といった社会問題を背景に、労働環境を見直し生産性を向上させたいという政府の意図があります。
企業では、労働時間の見直しや多様で柔軟な働き方を実現させるなど、従業員の事情に応じた働き方を選択できるようにする必要があります。
残業をすればするほど、企業への貢献として評価されるという従来の働き方は通用しません。企業は、残業時間を減らし今までよりも短時間で同じ業務量を行えるように「生産性の向上」に取り組まなければなりません。
そのため、働いた時間だけに目を向けるのではなく、能力や行動で評価する仕組みが必要となります。
人材の確保
適切な人事評価制度があれば、「自社にあった人材」が明確になります。
採用時には、自社のビジョンを明確に打ち出しやすく、ビジョンを理解した上での応募者が集まることによって、ミスマッチが少なくなります。
企業が必要とする人物像を理解した上での入社は、定着しやすく離職率も下がるでしょう。
人材教育
どのような勤務態度、知識・技術、コミュニケーション能力が期待されるのかが明確になることにより、従業員の目指す方向がわかりやすなります。基準があることに取り組むことで、成長のスピードが加速されます。
人事評価制度の注意点
企業理念に繋げる
企業と従業員の目的の乖離を防ぐため、企業理念と結びついた人事評価を行う必要があります。企業理念の実現のために従業員一人一人がすべきことを設定し、企業への貢献意識が持てるようにしましょう。
人事評価には公平性・透明性
企業規模が小さいほど評価によって影響が大きくでてきます。
どのような内容がどのような基準で評価されるかを予め明記・開示すことで、公平性・透明性を保つことができます。
評価の内容が不透明であると従業員は納得せず、不満を抱き、モチベーションの低下から生産性を低下させてしまう場合もあります。
フィードバックを行う
人事評価を行っても、フィードバックを行わないと意味がありません。
評価結果から、現在の課題や会社からの期待などを正確に伝え、業務改善に繋がるようフィードバック面談を必ず実施しましょう。
まとめ
評価される従業員側からしてみたら、公正な人事評価制度があるほうが、やるべきことが明確に具体的に行動に移すことができるようになります。
それを考慮すると、従業員が1人であっても人事評価制度があったほうがよいかもしれません。
従業員人数が少ないほうが制度の構築や運用がコンパクトにすみます。規模によって人事評価制度を変化させることは必要ですが、まずは人事評価制度を導入することから始めましょう。