中小企業においても、HRテクノロジーを導入することで、効率的な人事管理や業務改善を目指す企業が増えてきています。
ただし、大企業と比べると導入や運用においていくつかの課題があります。
以下に中小企業向けのHRテクノロジーの種類導入メリット、また、導入時の課題について詳しく説明します。
HRテクノロジーの種類
ひと口に、HRテクノロジーといっても、種類は様々です。
1.クラウド型勤怠管理システムの導入
事例:クラウド型勤怠管理システムで、従業員の出退勤や休暇管理を自動化。
効果:紙やExcelで行っていた勤怠管理がクラウド上で一元管理できるようになります。
リアルタイムでの勤務状況の把握が可能なので、従業員もスマホやタブレットで勤怠申請ができます。
近年増加している、リモートワークやフレックスタイム制にも柔軟に対応できます。
2.給与計算・労務管理システム
事例:給与計算や年末調整、入退社手続きの自動化が進められます。
中小企業に多い少人数の人事担当者でも負担を軽減できます。
効果:人事・労務業務にかかる手作業が減り、正確性の向上も期待できます。
ミスを防止できるだけでなく、法改正に迅速に対応できるメリットもあります。
紙での手続きが減るため、コスト削減にもつながります。
3.採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)の活用
事例:ATS(採用管理システム)を導入し、採用プロセスを可視化している中小企業もあります。
これにより、応募者の進捗状況や面接日程を一元管理できます。
効果:少人数でも効率的に採用活動を行えるようになり、面接スケジュール調整や進捗確認の作業が簡素化されます。
4.従業員満足度調査やエンゲージメントツール
事例:従業員同士の感謝の気持ちを可視化したり、満足度や意見を定期的に調査することで、職場環境改善に役立てている企業もあります。
効果:社員同士のコミュニケーションが活性化し、離職防止につながります。
アンケート結果を基に、従業員が求める施策の実行を検討することも可能です。
5.オンライン研修・eラーニングプラットフォーム
事例:eラーニングプラットフォームを導入して、リスキリング(再教育)やスキルアップのためのオンライン学習を提供している企業もあります。
効果:社員が自主的に学習できる環境を整え、業務時間外でもスキル向上が期待できます。
コストを抑えて研修を実施できる点が中小企業に適しています。
6.人事評価ツール
事例:人事の管理負担を減らすため、また、公正な人事評価を行うために人事評価ツールを取り入れている企業があります。
効果:基準が明確な人事評価により、従業員の満足度を向上させ、離職防止につなぐことができます。
中小企業がデジタル化・HRテクノロジー導入にあたり直面する課題
上記に記載したように、多くのツールがサービス化されています。
どのツールもDXを推進するツールとして魅力を感じますが、中小企業ならではの直面する課題もあります。
1.コストの問題
まず、第一にこれを考える経営者が多いのではないでしょうか。
中小企業にとって、導入費用や月額使用料の負担が大きくなることがあります。
特に、従業員数が少ない企業ではコスト対効果を重視し、投資に慎重な判断が求めるのではないでしょうか。
導入前には必ず、無料トライアルを試し、費用対効果をしっかり検証する必要があるでしょう。
2.デジタルスキル不足
中小企業ではITリテラシーが高くない従業員も多いため、新しいシステムの操作や導入後の定着に時間がかかることがあります。
特に人事担当者自身がデジタルツールの扱いに慣れていない場合、教育やサポートが不可欠です。
3.運用リソースの不足
導入後の運用に専任の担当者を置くことが難しいと、システムの設定やトラブル対応が後回しになりがちです。
そのため、システムの効果が十分に発揮されないケースもでてきます。
初期設定が簡単で、サポート体制が整ったサービスを選ぶと安心です。
4.システムの選定が難しい
多くのHRテクノロジーが提供されている中、自社に合ったシステムを見極めることが難しくなり、情報収集や比較検討に時間がかかります。
業種や従業員規模に応じて、必要な機能を絞り込み、シンプルでコスト効果の高いサービスを選ぶことが大切です。
5.従業員の理解
新しいテクノロジー導入には、従業員から抵抗を受けることもあります。
変化を好まず「今までのやり方が楽」と感じる従業員もいることでしょう。
導入を理解してもらうよう、メリットや操作の簡便さを前もって周知し、利用促進を図ることが必要です。
6.セキュリティ対策
クラウドサービスを利用する際、データの安全性や情報漏洩のリスクを懸念する声もあります。
中小企業には情報セキュリティの専門担当者がいない場合も多く、信頼性の高いプロバイダーを選ぶこと、またセキュリティ教育の徹底が必要です。
中小企業向けHRテクノロジー導入のポイント
どのツールの導入にしても、導入のポイントがあります。
段階的な導入:全ての業務を一度にデジタル化すると混乱をまねきます。
最も効果が出やすいと感じるツールから段階的にデジタル化を進めると、リソースを効率的に使えます。
導入サポートのあるツールを選ぶ:中小企業向けに充実したサポートを提供しているサービスを選ぶと、システムの定着がスムーズに進みます。
費用対効果の検証:導入後の効果測定を行い、効率化の成果や従業員の使い勝手を評価することで、必要に応じて改善や調整が可能です。
中小企業向けHRテクノロジー導入のポイント
機能面で大企業向けのツールを選ぶと、課題が異なり、導入がうまくいかない場合もあります。
「自社にあったシステムを検討しなければならない」とよく言われますが、どのようなツールが自社に合うのかがわからない場合が多いかと思います。
しかし、時間はかかるかもしれませんが、導入を成功させるためには、よく検討することが大切です。
比較検討をよく行い、トライアルを必ず実施するようにしましょう。
経営者が負担に感じているツールの導入検討はもちろん、事前に従業員が何に不満を持っているかのアンケートを実施し、解決につながるツールを選ぶと効果が表れやすいでしょう。