承認欲求を満たしてあげれば、元気のない中間管理職が生き返る

社内会議 コーチング・フィードバック

中間管理職のミッションは、自らに課された目標達成にむけ、部下の業務進捗をマネジメントすることです。最近では、組織能力を最大限に引き上げる、つまり部下の承認欲求を満たして、やる気を引き出すことが求められています。

一方、中間管理職自身の承認欲求は、話題になりません。「管理職がやる気を出すのは当たり前」なんでしょうか。


1.承認欲求とは何か

「人間は低次元の欲求が満たされるようになると、より高次元の欲求を求めるようになり、最終的に人間は自己実現をめざして間断なく成長する」

今から50年以上前、アメリカの心理学者【アブラハム・マズロー】は、【5段階欲求説】を提唱しました。低次元な欲求とは、どちらかというと経済的な欲求であり、マズロー欲求を第1段階から第3段階までに区分しています。

第1段階:生理的欲求

食欲・性欲・睡眠欲といった動物レベルの欲求

第2段階:安全欲求

安心して暮らせる住まいを追い出されない、健康でありたい、経済的に満たされたい

第3段階:所属と愛の欲求

仲間が欲しい、家族が欲しい、就職したい、進学したい

こうした欲求が満たされると、人間は周囲から存在を認められ、尊敬を受けたいと考えるようになります。さらに一歩踏み込んで、周囲からだけではなく、自己承認のため達成感や成長感を求めるようになります。これが第3段階の承認欲求です。

第4段階:承認欲求

社会的地位・権力・名声・名誉を渇望する、周囲を従わせたい、賞賛されたい、誉められたい、他者に依存したくない、自立したい、スキルを高めたい、高い目標をクリアしたい。この承認欲求が満たされると、人間は最終段階の自己実現へと向かいます。貧しいユダヤ系ロシア人移民であったマズロー自身も、この5段階のステップを踏みながら、高名な大学教授への道を歩んできたのでしょう。


2.「承認欲求=褒められたい」ではない

若手社員なら、指示された業務を無事にやり遂げ、それで上司に褒められたり、得意先に感謝されたり、周囲から賞賛されれば、承認欲求は満たされるでしょう。中間管理職ともなれば、そうはいきません。キーワードの一番目は裁量の余地です。

最近は働き方見直しが声高に叫ばれ、残業削減や有給休暇取得が推奨されていますが、仕事によるストレスは何も仕事量や時間だけが原因な訳ではありません。仕事のストレスは、要求される仕事量と裁量の大きさの両方で決まるといわれています。つまり多少仕事がハードでも、裁量の余地が大きく、自分の判断で意思決定ができる仕事なら、人間はイキイキと働けるのです。 中間管理職といっても、裁量の大きさは仕事によって大きく異なります。

例えば、定型的な経理業務を統括するようなマネージャーの場合、出張や飲食費の精算・固定資産処理・売掛管理といった業務プロセスをマネジメントするのが仕事の中心です。業務請負社員を使っているようなケースもあり、労務管理にも神経を使う割に、裁量の余地はあまり残されていません。こうした仕事のマネージャーは、承認欲求を満たされる機会が少ないのです。

では、人事部で新入社員や中途入社の採用、内定者フォローやその後の教育を掌るようなセクションのマネージャーはどうでしょう。採用人数・職種別の採用枠・選考プロセスをプラニングし、内定後の配属先も調整しなければなりません。プレッシャーを感じる仕事ですが、裁量の余地も大きく、達成感という意味で承認欲求が満たされることも多いのです。


3.存在感を示せる仕事と示しにくい仕事

承認欲求2番目のキーワードは存在感です。周囲に存在感を認められれば、承認欲求も満たされます。人事部といえば、ポジションパワーの象徴のように思われていますが、すべての部署に当てはまるわけではありません。

例えば、給与計算、福利厚生窓口、健康保険組合や社会保険事務といった部署は、圧倒的に定型業務のウエイトが高く、中間管理職は業務の円滑な推進に追われる一方で、周囲から注目を浴びることはめったにありません。企業の中には、こうした職場のマネージャー職を、いわゆる「上がりのポスト」と位置付けているところも少なくないのです。

同じ人事部でも、管理職を含めた従業員の異動・人事考課を調整する、いわゆる人事屋さんは全く違います。人事屋さんが営業所を訪ねれば、直ちに所長室に呼ばれて密談が始まる、サラリーマンならそうした場面に出くわしたことがあるはずです。人事部長や人事担当役員を補佐するような企画セクションのマネージャーも、大きな存在感を放っています。こうしたマネージャーは、エレベーターに乗ってくるだけで、雰囲気が違います。


4.承認欲求を満たすには

では、裁量の小さい、存在感を示せないような職場のマネージャーは放っておいてもよいのでしょうか?

上位職(部長・室長)は、こうした浮かばれない中間管理職をもっと元気づけ、成果をあげさせなければいけません。そのためにも、彼らに【自ら課題を考えさせるべき】なのです。

例えば定型的な経理業務でも、最近はアウトソース単価も上がっており、外注に頼ることも難しくなっています。ですので、こうした業務の生産性向上案を立案させるのも一案です。もちろん立案させるだけでなく、例えばITを活用するならそのための予算や工数といったリソースも提供しなければなりません。