1on1ミーティングにおいて上司が必要な技術とその習得方法

1on1 コーチング・フィードバック

1on1ミーティングは、上司の人柄で進める単なるおしゃべりではありません。すべては部下の成長を促すための時間と認識し、意識的にスキルを活用して進めていくものです。
ここでは1on1ミーティングで上司に必要なスキルと、習得のために行いたい5つのポイントについて紹介します。

■1on1ミーティングの受信スキル

1on1ミーティングは、上司と部下の貴重なコミュニケーション機会です。主役となる部下に心置きなく、安心して話してもらうための受信力が求められます。
部下が何でも話せる、話を聞いてほしいと思えるのは信頼の証です。
以下は信頼関係を築いていくことに重要となる基盤のスキルとなります。

【1】傾聴力

部下の話を遮ることなく、全集中力を持って耳を傾けます。部下が気持ちよく話せる環境や雰囲気を積極的に作り出し、アクティブに聞く姿勢が求められます。
コミュニケーションですから、不動、無言で聞けばいいというわけではありません。
相づちを入れて理解していることを示す、同じ言葉を繰り返して確認する、質問で深掘りすることなどを取り入れて、部下の話の密度を高めていきます。

【2】観察力

観察力とは、言葉だけでは見えてこない部分を汲み取る力のことです。部下が話をしているときの表情やしぐさ、声のトーンや速さ、ほんの少しの変化が部下の心境や状況をより深く理解する材料になります。
抱えている心境をすべてオープンにできる状況を提供するきっかけを見出すためにも重要なスキルです。1on1ミーティングの時間だけでなく、日ごろの業務でもよく部下を観ていくことが大切です。

【3】承認力

承認するとは部下の意見や考えを受け止めることです。上司や個人としての主観を一切含まず、そのままを客観的に認識したと示すことです。
この「そのまま」という点が承認のポイントです。それを反論、意見、称賛などでレベル付けすることはしません。部下について見えたことも部下の言葉も、自分の主観を一切加えずにゼロベースで、その先の言葉を伝えたり、質問したりを続けていきます。

■1on1に求められる発信スキル

1on1ミーティングで上司は部下を成長に導く役割を持ちます。
部下の成長を促すために身に付けたい具体的なスキルが「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」です。
これらは、業務の中で部下の状況と事柄によって使い分けていく必要があります。

【1】コーチング

コーチングとは教え導くことではなく、気付かせて導いていく手法です。答えは部下が見出すことを前提に、その気付きと前進のためのサポートを行います。
1on1ミーティングでは、闇雲ではなく確固たる意図のある質の高い質問を投げかけていきます。
人によって解釈が異なることがらについて、部下の中から答えを引き出し経験から学んでほしい場合にコーチングを用います。

【2】ティーチング

ティーチングについては、コーチングとの差別化を強く意識する必要があります。ティーチングは、客観的に答えが同一であるスキルや知識の共有となる場合に用います。
経験や主観で提供しないことが重要ポイントとなるでしょう。
そのスキルや業務についての正確な知識を持っていることが必須となります。

【3】フィードバック

フィードバックはミーティングで傾聴し、部下を理解したあとの成長の促進剤となります。ミーティング以外の時間でも観察を繰り返しながら、要所で部下の成長を確実にするために良い点も悪い点も承認として率直に伝えていきます。そこで改善のための気付きの得られる伝え方が必要です。1on1ミーティングの目的の一つでもある上司と部下のコミュニケーションの機会という役割を持っています。

■1on1習得のための5つのDO

上記に挙げたスキルは、いずれも1on1ミーティングで必要となるスキルです。
幅広いものですが、習得のための5つのポイントを紹介します。

【1】実践あるのみ

1on1ミーティングを効果的に行なうために必要なスキルはかなり幅広いです。これらのスキルは、研修やセミナーなどの座学だけでは身に付きません。
1on1を実践する中で、試行錯誤、振り返り、失敗を積み重ねながら、体感し心で学んでいくことが欠かせない習得要素となります。

【2】1on1の目的の共有

1on1ミーティングは部下、もしくは部下の成長が第一目的だということ共有します。1on1のプロセスで、双方が協力して効果を高めようとする意識を持つのです。
上司だけが勢いづいても、部下がその意義や目的を知らなければ、せっかく時間を掛ける効果が薄れてしまいます。
上司は1on1プロセスの場数創出ができ、その質を上げられれば部下にも良い影響を与えていけるのです。

【3】頻度を高める

1on1ミーティングは、時間の長さや量よりも、頻度のほうが重要といわれています。短い時間でも、双方の負担も軽くなるためデメリットにはなりません。
頻度が高ければ双方の親しみ度が増し、基盤として欠かせない信頼関係を強固にできます。
1on1に必要な上司としての意識を習慣づけるためにも役立つはずです。少なくとも週に1回は時間を設けることが理想です。

【4】上司もフィードバックをもらう

1on1ミーティングにおいて、上司としての目標をあらかじめ部下に伝えておきます。毎回終わるごとに軽くでもフィードバックをもらうことが効果的です。
学んだことは何か、気付きがあったか、何をするかなどをアンケート形式にしておくと、部下の負担は軽くできるはずです。
これらの項目を確認することで1on1の改善ポイントが見つけられるでしょう。

【5】行動に移すまでを1on1に設定

1on1ミーティングの中で部下との約束事があれば、できるだけ早いうちに行動に移します。部下との1on1が終わった後に、いくらかの時間を確保しておいて、その約束を実行する時間にするのもおすすめです。1on1の習得には、本番の1on1をスムーズに進めることが必要です。部下との信頼の基盤を崩さないためにも、約束事項があれば、必ず遂行しましょう。

1on1ミーティングはおしゃべりであってはいけませんし、通常の評価面談のようなものとも異なります。
上司と部下がお互いに意欲を高め合いながら業務に取り組むための効果的なツールとなるでしょう。
それをリードしていくには、上司自身のスキルを磨き続けることも必須です。