目標管理の仕組み「OKR」と「MBO」の特徴と違い

目標管理 OKR・パフォーマンス

目標設定や管理をしていて、よく耳にする「OKR」と「MBO」。目標管理に関するワードなのはわかっているけど、具体的な違いや意味はちゃんと理解できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はその2つの言葉について、特徴や違いを説明します。


1.目標管理について

まずは、組織における目標管理について説明します。組織における目標管理の意義として、成果を挙げるために必要だということはご存知の方も多いかと思います。目標管理において重要なことは、組織の目的に沿った成果を挙げるために、目標を正しく設定するのはもちろんですが、その目標が組織の末端の人間まで、しっかり行き届き、1人1人が主体的に行動を起こすのが重要です。組織の末端までが目標を理解し、目標に沿ったアクションを起こし、成果を挙げていく。これが組織の運営の図式になります。この末端までをどう動かすかが、組織のパフォーマンスに直結します。

今回説明する目標管理の仕組み「OKR」と「MBO」は、どちらも組織のパフォーマンスを最大化するために、末端の個人の能力までフル活用するための仕組みになります。

最近注目を集めている「OKR」の特徴と活用方法を説明し、「OKR」と比較しながら「MBO」を見ることで、それぞれの違いや目標管理自体についての理解を深めていきましょう。それでは「OKR」から説明していきます。


2.「OKR」の特徴

「OKR」とは「Objective and Key Result(目標と主な成果)」の略になります。組織や構成員の目標を明確化させる仕組みで、Intel発祥でCEOだったアンディ・グローブ氏が開発しました。現在では、かの有名なGoogleやZyngaなどの数多くのグローバル企業で導入される目標管理の手法です。Googleが導入し成功を収めたことを発表し、日本国内ではメルカリが導入、急成長を遂げるなど、最近では最も注目を集めている目標管理の仕組みになります。

「OKR」とは組織レベルで、全構成員に組織に沿った高い次元の目標を共有し、その達成に向けて構成員一人一人が、最大のパフォーマンスをだすための仕組みになります。これは、末端の人間のみではなく、トップまでの全構成員が対象となります。一般的には100%の力を発揮したときに、60%から70%の達成となるような目標が望ましいとされていて、100%の達成率を出すためには100%以上のパフォーマンスで取り組まなければならないものになります。

KPI(Key Perfomance Indicator)と似たようなものと思われることも多いのですが、これは全く違ったものになります。KPIは目標設定後の達成状況を数値化して計測するためのもので、プロセス管理のために用いられます。これは部門ごとに管理するものなので、全構成員を対象とした目標設定の仕組みの「OKR」とは別物です。

「OKR」は全構成員を対象としたものですから、トップから末端までの目標設定や達成状況においてのコミュニケーションを促し、組織の成果へのコミットメント能力が挙がることのみではなく、組織の風土そのものを醸成することができます。

 


3.「OKR」の活用

では、実際の「OKR」の活用方法を説明していきましょう。まずは目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)をいくつかの条件をもとに設定します。

目標(Objectives)

・野心的でありながらも現実的なもので、限界を超えることを目標とする。ただ、全く手の届かない目標ではなく、手が届きそうな目標とする。

・100%の能力で取り組んで、60%~70%の達成率となるような目標にすること。

・測定可能な目標にすること。

・多くても4~5個にすること。

主要な結果(Key Results)

・数値で測定可能であること。

・客観的に検証できること。

・1つの目標に対して、5個以内とすること。

この目標と主要な結果が決まれば、あとは全構成員が個々として、達成に向けて進んでいくのですが、その前に「OKR」を運用していくポイントをしっかり押さえておきましょう。

  • 組織トップから末端まで、全メンバーがコミュニケーションを十分取り、同意のもとで行うこと。この際にトップから末端までの向かう方向は統一されていること。
  • トップから末端まで全メンバーが公開する。そして個人の「OKR」が、組織へ与える貢献を明確にする。
  • 一定時期ごとに評価をする。全メンバーが見られるように、時間もかけすぎないようにスコアで示す等の工夫をすること。

 

どうでしょう?ポイントを見るとお気づきになった方もいると思います。「OKR」を運用していくうえで重要なのが、全メンバー1人1人が最大限のパフォーマンスを発揮することです。しかし、メンバーがバラバラに動くのではなく、方向性が統一されているため、向かう方向は一緒です。そのため、メンバー間での様々な情報交換や、想いの共有が必要となり、コミュニケーションをメンバー間で密にとることが前提となります。「メンバー個人の能力を、組織として管理し、最大化する=組織の成果も最大化する。」ことを目的とした、目標管理方法と言えるでしょう。

 


4.「MBO」の特徴

続いて、「MBO」について説明します。「MBO」(Management by Objectives)とは「目標管理制度」で、ピータードラッガーが提唱した、組織マネジメントの制度です。個別に目標を設定し、その達成度合いによって「評価」を決める制度になります。

「MBO」は個々が達成する目標を明確にし、最終的には個人と組織の方向性が同じになるように統一していきます。まずは個人が組織の目標について、自身の目標を設定することから始まり、次に上司などと話し合いをしながら、組織の目標とリンクさせます。このプロセスを踏むことにより、個人の目標達成が組織の成果へ繋がることをしっかり認識できるので、より主体性をもって仕事に取り組めるでしょう。

 


5.「MBO」の活用

では「MBO」を活用するにあたってのポイントを説明していきます。

 目標設定のポイント

  • 目標と達成までの手法が明確で具体的であること。
  • 目標の難易度が適正なレベルであること。(決して手の届かないレベルではない)
  • 時間、期限を明確に設定。
  • 組織の目標とリンクするように設定する。

この目標設定をまずは個人で行います。自分の役割は組織にとってどんなものになるのか考えながら設定していくことが求められます。この段階で部下は組織に対しての自分を見つめ直せるメリットもあります。

次に上司と組織の目標と個人の目標がしっかりリンクしているか、適切な設定かどうか見直していきます。組織内のコミュニケーションの活発化にもなるでしょう。最後に設定した時期で評価を行います。「MBO」は部下の能力の活性化を促す、人材育成の面をもっていることに加え、評価制度としても優秀で、個人と上司間で定めた目標を評価することになりますので、部下の目に見えた形で評価することができます。

 


6.「OKR」と「MBO」の違い

「OKR」と「MBO」を比較すると重なる点は多々あります。個人の目標が組織の目標とリンクすることが条件で、個人の目標が組織の成果へ繋がることを意識させることで、組織の末端の構成員まで主体性を持たせることで人材育成を兼ねていることなど、かなり似ているように思われるのですが、「MBO」は評価制度との認識が強く、組織全体というよりは部署ごとの個人と上司の間の管理制度の色合いが強く出やすいです。

「MBO」は評価制度としての機能も強い為に、使い方を間違えると一方的な制度になってしまいがちで、大事な人材育成の面が弱まってしまいます。

例をあげてみましょう。

  • 成果を重視しすぎるとノルマ制のような半強制的な目標設定になったり、やらされ感の強い目標になってしまう。
  • 成果に対する金銭等の報酬を求め、目標が低すぎるなど適切な設定をしない。
  • 達成できなかった者のモチベーションが制度を取り入れる前よりも下がってしまう恐れがある。
  • 評価者は年功序列に比べて、個人個人と向き合うために負担が大きくなる。

などの様々な問題も潜んでいます。ただこれらの問題は、評価者となる層が鍵となっていて、その層のマネジメント力や制度へ対する理解が深まれば、使いこなすことができるであろう制度です。

「OKR」は評価制度というよりは、個人の能力を最大限に引き出す人材育成を目的とした色が強く出ているのと、組織全体が取り組むのが大きな違いでしょう。評価制度の機能はないものの、「MBO」の発展形とも捉えることができます。

 


7.最後に

いかがでしたでしょうか。「OKR」も「MBO」も目標管理として優秀な仕組みですが、どちらも人材育成が組織の成果を生み出すという考えからできています。「OKR」も「MBO」も取り入れる前に、組織のマネジメント層がしっかりと理解を深めたうえで実施することが重要になります。部下を活かし組織のパフォーマンスを向上させるには「OKR」、「MBO」ともに最高の仕組みです。よく理解し実践すれば、組織も個人も必ずや成長することでしょう。皆様の組織にもぜひ取り入れてみて下さい。