人材育成のできる企業における人材価値の重要度と成長プロセス

人材 OKR・パフォーマンス

1.即戦力は企業成長を後押しするか?

アメリカでは、即戦力人材を求める企業が大半といわれています。新卒の場合でも、インターンシップやボランティアなど何らかの社会経験を積んでから就職活動に入るのが主流です。

確かに、即時に業務が進められる人材であれば、能力やスキルを教育する時間もコストも労力も省けると考えられますし、利益につながる仕事ができるとなれば企業側の「急務」は果たせる人材です。

社員だけでなく企業にもスピードが求められる現代では、「良策」と捉えられる風潮は日本にも流れてきました。企業が考えるべきは、その先にその優秀な即戦力社員にとっての活躍の場と成長というメリットを提供できるかということかもしれません。

現代の労働人口の減少だけが原因とは言い切れない日本の人材不足。不足が叫ばれている種類のひとつが、人を育てる「管理職」です。

近年の日本では、全世代の労働者の転職に対する精神的なハードルが下がってきています。メリットを感じない企業で充実感のない労働を続けることよりもグッと低いのではないでしょうか。その後押しもあって、企業にとっての即戦力人材は、即転職力もあるということを経営者や人事は強く認識しておかなければならない時代に突入しています。


2.即戦力人材を求める企業の最優先事項

企業が社員に即戦力を求めるときの最優先事項は、業績アップ、コスト削減、生産性の向上。少なくとも社員や人材育成、組織づくりが優先ではないでしょう。たとえ「人が優先」と掲げる企業であっても、育成する時間も労力も放棄するのですから実践しているとは言えないでしょう。

そのような企業は、即戦力のメリットを受け取ることと引き換えに、大きな機会を失っていることに気付くべきでしょう。この大損失を、アメリカの多くの企業が経験しているのです。日本の管理職やリーダー人材の不足の要因の一つにもなっているようです。


3.戦力人材を入社後に育成するメリット

アメリカで優秀な即戦力人材の採用に注力してきた企業が軒並みに衰退していく中で、着実に長期的に業績を伸ばし続けている企業も存在しています。それらの企業の特徴には、いくつかの共通点があるようです。

経営者(企業)の明確な価値観の存在

人材が一番の財産という認識と一貫した行動

普通の人材を社内で有力な戦力に育てている

これらの特徴は単独で存在しているのではなく、相互につながっています。

重要となるのが、価値観の存在です。

長期的に成長を遂げている企業は、独特で一貫した価値観を社内外に発信できているのです。人材を尊重し、業績を伸ばしてきた企業では価値観が一致することを採用の条件としています。

人材育成の時間やその中で持たれるコミュニケーションも、企業が社員と価値観を共有する機会なのです。この意味のある時間の質を上げることで、価値観のさらなる浸透と人材育成、さらにはポテンシャルの開花を促しているのです。伝え方は個々の企業で様々ですが、価値観とは、言葉で伝えていくだけのものではありません。価値観に沿った行動、雰囲気、進め方、評価の視点や仕方などのすべてに反映させるべきもの。

例えば、教育や業務のプロセスの在り方も社員への伝達になっていくでしょう。この機会を逃す企業は、社員のエンゲージメントモチベーションを高めることが難しいようです。社員にとって、一体化した輪の中にいるという意識が生まれにくく、いつまでも取り換え可能なパーツのような感覚が抜けないままの仕事となってしまうからです。


4.成功する人材育成の要素とは?

社員に自分が働く会社のことを、良い会社、働きやすい会社と感じて欲しいというのは企業の大きな願いでしょう。そうでなければ、社員や組織の成長が見込めないばかりでなく、その人材を失い、また新たな採用に経費をつぎ込む負のスパイラルが延々と続くことになるでしょう。

日本でも働き方改革が進み、働く環境や福利厚生を充実させる企業が増えてきました。しかし、社員は「飴玉」だけでは、エンゲージメントやモチベーションを保ち続いけることが難しいことを知っておく必要があるでしょう。社員にとって良い会社、働きやすい会社は、社員を尊重した経営でなければ成し得ません。企業が社員の高いエンゲージメントやモチベーションを維持することに効果的な対策を追求しなければなりません。実は、十把ひとからげにはいかないものですが、人材育成には欠かせません。

「社員の尊重」の尊重する内容が社員の希望とずれてしまっては台無し。物理的な環境だけでなく、精神的な居心地の良さや自己の重要度を感じてもらえる「組織環境」を整えることも大事です。これは社員のポテンシャルを引き出すための条件といえるでしょう。

社員にとっても企業に対する高いエンゲージメントや仕事に対するモチベーションを持つことが仕事のやりがいや自己成長につながるのです。コンスタントにその機会の得られる企業から離れたいと思う社員は少ないはずです。