企業の継続的な存続を支えるのは社員です。
その社員のモチベーションを保つために企業は何ができるのでしょう。
生産性が低いため、社員に時間や経費といった投資ができずにいる企業は多いかもしれません。
ここでは、その逆の発想で、社員に投資することで社員のモチベーションの向上と好業績につなげた企業の事例を紹介します。
モチベーション向上を何で促すか
社員のモチベーションの源泉を満たすための環境を整え、手厚い制度を用意する企業が増えています。しかし、社員のモチベーションの向上や成長はおろか、定着すらままならない企業も少なくないようです。
社員のモチベーションは一時的なものでは困りものです。企業にとってどんなに魅力的で優秀な社員も、入社してからの学びや成長をその社員自身が感じなければ、モチベーションを保つことが難しくなります。
企業は、そのモチベーションの要素を社員本人、もしくは経験させる業務に委ねてはならないのです。
企業の事業の在り方や進め方が、社員のモチベーションに影響を与えるという認識が必要です。
社員のモチベーションを引き出し、社員と組織の成長させることに成功した2つの企業のモチベーションマネジメントにつながる取り組みを紹介します。
【事例1】企業と社員の共有性が引き出したものとは
業績低迷を経験した星野リゾートの復活事例です。
企業を再建させたいという企業と社員の思いは一致していたそうです。
しかし、「思いはあるのに何をどうしていいかわからない」と感じる社員が大半。
再建したいという欲求どまりで、モチベーションを感じることができていません。
本物のモチベーションは、行動し、行動による変化を感じ取りながら高まっていくものといわれます。
そこで、経営層は、事業再建のための「コンセプトづくり」を活用しました。
トップダウン方式では社員のモチベーションの向上は望めないと考え、現場を知る社員に意見を求めたのです。コンセプトづくりの答えをすべて現場に「出してもらう」ことで、「当事者意識」や「自発性」が芽生えています。このプロセスによって経営陣と社員の「共有性」が生まれていることも大きなポイントです。
全員で特定客層の認識を共有したことによって「思いはあるが何をすればいいか分からない」という領域を脱しています。具体策の設定も実践も完全に現場社員に委ねたことで、具体的で自発的な行動の継続が実現しています。自分たちで考えた目標の受容度は高いはず。モチベーション理論の中の「目標設定理論」に相当する現象です。
「コンセプトづくり」の活用は、社員のモチベーションアップという成果と業績向上を成し遂げています。
トップダウンのコンセプト、施策、実践マニュアルは、企業にとっても社員にとっても効率的で簡単な策かもしれません。しかし、あえて共有のためのコンセプトづくりでの共有時間を投資したことによる成功事例です。
【事例2】社員の強みを発掘してバックアップ
145社のグループ会社を持つグローバル企業の大塚製薬株式会社は、将来の組織をけん引する経営層人材の育成に力を入れています。育成施策「大塚オリンピック」では、幹部候補の社員が経営や会社のことを考え、語れる場を提供しています。企業の歴史や文化を背景にした判断基準やケースワークが採用されています。
プログラムのワークの中に、経営幹部の立場と仮定し「もし○○が起きたら何が必要か」「○○の場合はどう考える」など「疑似体験」をさせるものがあります。発想の着眼点を見るワークです。さらに経営陣としての情報リテラシーを強化するための指導も行われています。
その疑似体験によって、企業側は、社員個々のスペックや価値観、強みをより深く理解でます。
参加者にとっては、自分の「ありのまま」で経営レベルの思考を経験し、自分の強みの把握、会社や市場、ビジネスのことをどれくらい知れているかという自覚の機会となっているようです。産業アドバイザーの観察、面接を経て、プログラム終了後にはフィードバックが行われます。参加者は上司と面談を行い、その結果を基にしたアクションプランに落とし込むという流れです。
人事の適材適所の配置のマッチ度、参加者が見出す課題の質にも変化が見られ、モチベーションの向上につながっているようです。
社員に自分の強みを活かしたキャリアを提供する組織のモチベーションマネジメントの要素といえるでしょう。
まとめ
何かと効率化が優先される現代ですが、組織のモチベーションマネジメントも一時的なもの、物質的な環境整備だけでは不足のようです。組織には、時間をかけること、待つということも重要。
仕事にどう向き合うか、仕事の何を吸収するか、どんなことを感じればモチベーションが持続するのか、企業も社員のひとりひとりの「心境」に目を向けた、モチベーション向上のための支援が必要でしょう。