人的資本とは?人的資源との違いからなぜ開示が必要なのか

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2022年8月、内閣官房の非財務情報可視化研究会から、「人的資本可視化指針」が公表されました。

【参考】内閣官房 「人的資本可視化指針」(案)に対するパブリックコメントの結果の公示及び同指針の策定について」

「人的資本可視化指針」では、来年度にも有価証券報告書上での情報開示が義務化される方針が示され、企業において人的資本経営の推進と適切な情報開示に向けた方針が求められています。

昨今の急激なビジネス環境の変化に伴い、企業経営においては、人的資本という考え方が重要視され、企業価値向上を図るためには人材を効果的に活用し、企業価値向上を計るために人的資本という考え方は重要視されているのです。
こうした流れは、大企業だけに求められているわけではないので、中小企業であっても着目しなければならないでしょう。

人的資本と人的資源の違い

「人的資源」は、経営資源の中の「ヒト・モノ・カネ・情報」からヒト(「人材」)のみを指して用いられるもので、どちらかというと、資源=リソースと考えられ、消費されていくものに含まれています。

一方、「人的資本」とは、人材を資本として捉える考え方です。
個人が持つ知識や技能、能力、資質などを、付加価値を生み出す資本と見なし、価値創出がされ投資の対象とするという考え方です。

似ている言葉ですが、人材をリソースとするか、投資の対象とするかの違いがあり、企業としての人材戦略方針は大きく異なってきます。

ISO30414とは

人的資本の情報開示に関して、ISO30414として国際的なガイドラインが定められています。

ISOとは、スイスのジュネーブを拠点とする国際標準化機構、International Organization for Standardizationの略で、国際的に通用するさまざまなルールを標準化・規格化している非政府機関で、制定された規格はISO規格と呼ばれ、国際的な基準となります。

ISO30414の制定の大きな目的は2つ。

1.「組織や投資家が、人的資本の状況を定性的かつ定量的に把握すること」

2.「企業経営の持続可能性をサポートすること」

です。

人的資本の指標「11領域」

ISO30414は、11領域49項目において人的資本の情報開示を求めています。
こちらでは、おおまかに11領域を記載します。

人的資本の指標「11領域」
1.コンプライアンスと倫理
2.費用
3.多様性
4.リーダーシップ
5.組織文化
6.組織の健康、安全、福利
7.生産性
8.募集、流動性および離職率
9.スキルと能力
10.継承計画
11.労働力の可用性
【参考】ISO「ISO 30414:2018」

これまであいまいだった基準が基準化されることにより、人的資本の状況を定量化し「社内での比較」や「他社との比較」が可能となり、また、組織内への影響に対する因果関係を明らかすることができるようになります。人的資本の状況をデータ化することで、経営戦略を練りやすくし、企業の持続的な成長へと導くことを目的としているのです。

これからの課題

日本の企業においては、近年まで終身雇用制が前提とされ、人材確保に悩まされることがあまりなかったため、人的資本への投資はあまり重要視されていませんでした。しかし、人材不足とビジネス環境の変化が著しい中、人材の多様性や能力を持った個人の力が大きくなる中では、人材への投資は避けて通ることはできません。
人的資本の開示という面からではなく、人材に着目し人事戦略をもう一度考える必要があるのではないでしょうか。
そのため、企業の人事管理に対しどのように着手していけばよいかを考えてみましょう