1on1ミーティングで使える思考を広げる質問スキルとは

コーチング・フィードバック

上司と部下が1対1で定期的に行う1on1ミーティング。米国でも根付いているこの手法はいまや日本の企業でも多く取り入れられている手法でもあります。大人数の会議とは異なり、お互いに自然体で話せるメリットがあり、部下の成長やコミュニケーションの活性化が期待できます。

ただこの1on1ミーティング、ただ1対1で話せばよいというものでもありません。正しいコーチングスキルがなければ単なる雑談に終始してしまい、結果として貴重な時間を無駄に使ってしまうこともしばしば。

ではどのようにコーチングすれば適切なコミュニケーションが取って部下にとって有意義な時間とすることができるのでしょうか。


俯瞰した視点を与えてあげる(幽体離脱)

部下が一つのことに集中している場合や固執してしまっている場合、アイディアや思考は偏りがちになります。部下を幽体離脱しているつもりにさせて俯瞰していくことで思考を広げることがポイントです。例えば、この部下の認識を拡張する質問スキルとしては以下を意識することで実践することができます。

◆質問例

●異なる高さや位置から物事を見させてみる:

ーあなたが飛行機乗っていたとしてあなたはどのように見えていますか。あなたがキリンだとしたらどのように見えていますか?あなたがアリだとしたらどのように見えていますか?また、飛行機に乗っていて全てが見えているとしたら何をしますか?

●異なる距離から物事を見させてあげる:

ー現在の状況が遠くにいて見えなかった場合にどのようにしますか?自分が海外にいてまた何故そう思いましたか?

●自身を何か別の人やモノに置き換える:

ー自分がスーパーマンだったら何をしますか?自分が社長だったら何をしますか?自分がスティーブ・ジョブズだったら何をしますか?あなたが霊能力者で全てが見えているとしたらあなたの行動を止めているものはなんですか(サポタージュ)?自分が〇〇だったとしたら?また何故そう思いましたか?


的確な質問により部下に「気付き」を与えてあげる

現在、部下がどのような状況に置かれているのか、またどのように考えて行動しているのか、正しく状況を把握しなければ適切なコミュニケーションは行なえません。部下が考えていることを理解した上で「現在の認識の枠を拡げてあげる」ことで、現状を打破する「気付き」を与えてあげる必要があります。例えば、この部下の認識を拡張する質問スキルとしては以下を意識することで実践することができます。

◆質問例

●何かに例えて比べることを促す:

ー現在の状況は例えるならばどんな状況ですか?また何故そう思いましたか?

●ゴールを引き出してあげる:

ー今やっていることのゴールは何ですか?ゴールから逆算した時に、どんなことが考えられますか?

●今後の状況を想像させ、現在の状況を再認識させてあげる:

ー「今の状況がこのまま進むとどうなると思いますか?(未来の提示)」「今の状況は何故作り上げられたと思いますか?(現状の再認識)」
ー未来の自分だったら今の自分のどのようにアドバイスしますか?

●全体の流れを確認してあげる:

ー「この次の段階はどんなものが待ち受けていると思いますか?」

●他社の目線を意識させてあげる:

ー今のあなたの状況を他の人はどのように見えていると思いますか?または感じていると思いますか?

このように質問を行うことで、まずは現状に立ち返った時にどのようになっていくのか、意識を自分の枠組みの外に引き出して上げることができるのです。


思い込みによる「しばり」から脱却させてあげる

次に、自分という枠組みの中で自然にルール化されてしまっていることで、他の可能性を排除してしまっていることを気付かせてあげます。「認識を拡張」し、「制約から解き放ってあげる」ことで一度思考をリセットし、ゼロベースで考えることができる土台を築けるように導きます。例えば以下のように質問することが考えられます。

◆質問例

●関連性について考察させてあげる:

ー○○がもし他のものと関連があるとした何と関連があると思いますか?それはどんな点ですか?

●別オプションの可能性を考えさせてあげる:

ー仮に、今の方針が間違っているとしたら他の道はどんなものがありますか?

●ゼロベースで物事を発想させてあげる:

-今の状況を振り出しに戻して考えた時に、どんな可能性があいますか?それを実現するために分かっていないこと、学ぶべきことは何ですか?

●全体を意識させてあげる:

ー今の物事を例えば森の中の木の1つにしか過ぎないとしたら、森全体はどうなっていますか?

●逆の発想を意識させてあげる:

-今思っていること、状況、言っていることについて逆から考えた時にそんな可能性が考えられますか?

●万が一の可能性を考えさせる:

ー例え確率が低くとも、起こりうる可能性があるとしたらどんなことでか?またそれはどんな道筋で起こったと考えられますか?

いかがでしょうか?このように自分で勝手につく上げてしまったルールから解き放ってあげることで、柔軟に発想し全ての可能性を追求することができる準備が整うのです。今まで「できない理由」を真っ先に考えてしまって踏み出せなかったこともこの段階で「できる理由」から考えることができ、全く違った道を歩み出すきっかけを与えてあげることができます。


成功のイメージや実行に向けたイメージを持たせてあげる

ここまでくればあとは明るい未来について一緒に考え導いてあげることで、部下の表情は晴れやかになり、そしてこのミーティングが終わった頃にはモチベーション高く仕事に取り組むことができるでしょう。

◆質問例

●実行した時のイメージを想像させる:

ーそれを実施した場合、どのような課題が出てきますか?また、どのようにそれを対処したらいいですか?

●他の人の行動を見て学ぶことで成長できることに気付かせてあげる:

ー周りの人は自分が置かれている状況と似たようなことが合った場合、どのように解決していますか?またどのようにところを真似して成長していきたいですか?

●優先順位を設定させてあげる:

ー制約なく何でも解決していけるとしたら何から手を付けますか?どんなステップで成功させますか?

●成功イメージを持たせてあげる:

ー◯年後に自分が今の課題を解決できるようになっているとしたら、それは何故できるようになっていると思いますか?またそれはどんなプロセスでできるようになったと思いますか?

●巻き込むことで解決しやすくなることを伝えてあげる:

ー自分以外の誰かが一緒にやってくれるとしたら誰ですか?またどのように誘いますか?皆で解決できたらどんな未来、成長が待っていますか?

これであなたの部下はあなたのコーチングから自分では全く想像もしていなかった未来をより具体的にイメージし、また一歩成長に向かって歩みを進めていけるでしょう。
1on1ミーティングで正しく質問を行うことでコミュニケーションを円滑なものとし、もっと有意義で価値のあるものにしたいと考えている方は明日から試してみてはいかがでしょうか。