不必要なものを省き、本当に必要なものを投じる。世の中の企業が自社の生産性向上のために様々な策を講じています。Googleも生産性向上のために分析プロジェクトを実施し、難航する分析を経て意外な「必要なもの」を発見しました。生産性向上を求める世界中の多くの企業にハッと気付きを与える部分に辿り着いています。
心理的安全性とは
心理的安全性は心理学の専門用語です。心理的安全性が「ある」状態とは、気兼ねなく率直な発言や行動ができ、心理的に不安のない状態のことを指すといわれています。社員が、この状態で仕事ができるのが良いことは明白です。しかし、社員が「心理的安全性」を感じる組織やチームの環境や雰囲気は、決して自然にできあがっていくものではないようです。
心理的安全性のない状態とは
「心理的安全性」がないときの組織のメンバーには、不安が存在するといわれています。
- これを聞いたら、無知だ、馬鹿だと思われる不安
- 間違いを認めたり、助けを求めたりしたら、無能だと思われる不安
- 指摘をしたら、ネガティブもしくは一緒に働きたくないと思われる不安
- 邪魔になり、押しつけがましい、もしくは自立してないと思われる不安
これらの不安が、率直な意見や行動を取っていくことを阻んでしまうようです。
言い換えると、例えば1on1ミーティングや人事面談で本当の自分を出せない状態ともいえるでしょう。
Googleの発見!成功するチームの条件
2012年、Googleは生産性向上計画プロジェクト「アリストテレス」において、生産性を高める要素についての分析を行いました。同社の中で、あるチームは成功続き、あるチームは失敗続き、その違いの分析で見い出された共通項が「心理的安全性」だったのです。
組織の生産性向上を左右するのは、「チームワーク」や「組織内の規範」ではありませんでした。また、組織のメンバーの個々の能力の程度や個性の違いもチームの成功に影響を与えていません。
成功するチームでは、心理的安全性を阻害する不安が払拭され、高い「心理的安全性」が存在していました。チーム内メンバー同士の「心遣い」「同情」「配慮」「共感」が源となり、組織の「心理的安全性」が醸成されていたといいます。
心理的安全性のある環境づくり
個人差はあっても、人生の中で仕事に費やす時間の割合は大きいものです。「ありのままの自分」で組織に属せるか、「自分を曝け出せずに」組織で働くかは、仕事をする者としての自分も含め「人」としての幸せ感にも関わるものではないでしょうか。
何らかの不安のあるとき、つまり本当の自分を抑え、仮面を被った自分のとき、社員が必死に守ろうとするのは自分自身です。おのずと意識は、自分だけに向いてしまうことでしょう。その状態のメンバーで構成されたチームでは、理想的な連携を取っていくことも、チームだからこそ生まれやすい可能性の発掘も、効率的な進捗も望めません。
メンバーが他者へ意識を向け「心遣い」「同情」「配慮」「共感」を示すには、メンバー自身の余裕が必要です。その余裕には、メンバーが自分を曝け出すことも強力な一助となるはずです。
メンバーが他者からの「心遣い」「同情」「配慮」「共感」を受けることができれば、ありのままで居られる組織と感じ、安心して自分を曝け出すことができるのではないでしょうか。ニワトリが先か卵が先かにも似たスパイラルが存在しているようです。この循環がメンバーの「ありのまま」を引き出し、「心理的安全性」の高い組織になっていくのだと思います。
本来の自分でいられる組織のパワー
意識的でも、無意識的であっても、自分を曝け出せないメンバーは、見えないブレーキを常に踏んでいます。聞けない、言えないというブレーキは、本人だけでなくメンバーも組織全体も貴重な「知る機会」を失います。共有する機会をスルーした経験は、本人にネガティブな感情を落とし、それ以上の思考も停止させるでしょう。できないというブレーキも同じような経路を辿るのではないでしょうか。
そのときに、聞けたら、言えたら、スピーディーな解決や進行につながることは多いはずです。
それだけでなく、一人の疑問や意見は、周りに気付きをもたらし革新をもたらす可能性すら秘めているのです。組織には、メンバーの相互理解が不可欠といわれいます。しかし、理解してもらう自分が「自分でない自分」であるとき、仕事に苦痛を感じるメンバーはいるはずです。
ありのままの自分を曝け出せれば、その自分を周りに理解してもらえます。
これが、理想的な組織内の信頼関係とパフォーマンスを生む、根源といえるのではないでしょうか。
最後に
「心理的安全性」が組織の生産性に影響するというソフト的な視点は、スピードが重視されてきた現代で軽視されがちな部分だったかもしれません。直結するものではないとしても、「心理的安全性」の欠如が、生産性に関わる効率性や創造性に大きく影響を与えるものというのは明らか。
生産性向上の要素として対策を取っていくことが必要のようです。