12月に入り、「年末年始の休暇申請が増えてきた」「チームの勤務調整が難しい」といった声が多く聞かれます。
ここ数年、年末年始の働き方には明確な変化が起きています。特に若手社員の休暇の取り方、そしてリモートワークと出社が混在する環境(ハイブリッドワーク)は、従来の勤務調整では対応しづらい状況を生み出しています。
この記事では、2024〜2025年にかけて見られるトレンドをもとに、企業が向き合うべき年末年始の人事課題と対応策を整理します。
1. 若手を中心に「連休を長く取りたい」志向が強まっている
若手社員の間で最も顕著なのが、“年末年始の連休最適化”とも言える動きです。
● 有休をつなげて「10日〜12日の連休」を作る
・年始の1〜2日を有休にして、長期連休を確保
・旅行、帰省、推し活、スキルアップの時間に充てる
・中には「実家に帰るのが遠方なので長めに取りたい」という理由も
● 長期連休は“働く場の満足度”に直結
若手社員にとって、
「休みが取りやすい職場」=「働きやすさ」
という評価軸は定着しつつあります。
特に転職市場が活発なIT・ベンチャー企業では、休暇への柔軟さが選ばれる理由にもなり、企業の“魅力度”にも影響します。
2. ハイブリッドワークの普及で勤務調整の難易度が上がった
● 誰が出社しているか一目で分からない
・「年末の処理をお願いしようと思ったら不在だった」
・「出社前提のタスクが回らない」
など、“想定違い”による業務停滞が起きやすくなっています。
● 締め作業の属人化が目立つ
年末処理、請求、棚卸しなど、「特定の社員がいないと回らない業務」が残っている企業では、休暇調整が非常に難しくなります。
● リモート組だけが働いているように見える“心理的負担”
・出社する人
・完全に休む人
・遠隔で稼働する人
など多様な状態が混在すると「誰がどれくらい働いているのか」が見えづらく、不公平感を生みやすくなります。
3. 企業が整えておくべき「最低限のルール」
多様化を否定するのではなく、前提として扱えるように仕組みを整えることが重要です。
ここでは、年末年始に特に効果が高い“最低限の3つのルール”を紹介します。
① 休暇申請の締切日を明確にする
「いつまでに申請すれば、調整が可能なのか」を設定します。
例:年末年始の休暇は、12月10日までに申請する
これだけで、直前の混乱は大幅に減ります。
② 業務の属人化を棚卸しする
・特定の人にしかできない仕事
・特定の端末/アカウントが必要な作業
・請求や月次締めの担当
これらを可視化し、代替手段を整えておくことが年末の安定稼働につながります。
③ チーム内の最低稼働メンバーを設定する
同じ部署から同時に3名休まれると、現場の運用は破綻します。
“同じ期間で休む人数の上限”を設定しておくことでバランスが取れます。
4. 若手の価値観を踏まえると、企業には「調整の透明性」が求められる
若手社員の多くは、「休むこと」そのものよりも“ルールが明確で、平等に扱われていること”を重視します。
曖昧なルールのまま「なんとなく慣例的にこうしている」と運用すると、以下の不満につながります。
・今年だけ休みづらい雰囲気がある
・人によって許可基準が違う
・特定の人ばかり忙しい
・出社組とテレワーク組で不公平が出る
年末年始は特に“比較しやすい時期”であるため、不満が噴出しやすいタイミングです。
5. 年末年始の働き方と「人事評価」が密接に結びつく理由
年末年始の不満やトラブルは、実は人事評価制度の“透明性”が関係していることが多いという点は見逃せません。
● 年末に休暇を取る=評価が下がる?
いまだにこうした誤解は現場で起きやすく、「休みにくい職場」の根本原因になります。
● 評価基準が明確だと休暇への不安は消える
・成果
・進捗管理
・チーム貢献
など、評価項目が透明で説明できる状態になると、休暇と評価が混同されることがありません。
● 属人化の解消は“評価のしやすさ”にもつながる
特定の人だけに集中している業務は、評価にも偏りを生みます。
業務棚卸しは、評価制度の土台としても重要な要素です。
6. 多様化する働き方を支えるのは“制度と運用の一貫性”
年末年始の働き方が多様化するのは、悪いことではありません。
企業側が対応すべきは、混乱を生む原因が「ルールのあいまいさ」にあるという点です。
・休暇申請の基準
・チーム稼働の最適化
・業務の標準化
・不公平感を生まない運用
これらが整備されていれば、企業は多様な働き方を許容しつつ、組織としての安定性も保つことができます。
そのための基盤として、評価制度の体系化や、評価基準の見える化は欠かせません。
年末年始の働き方の記事であっても、人事評価制度と密接に関わるテーマであるため、企業にとっては“制度整備を見直すきっかけ”にもなります。

