目の前の仕事にコミットできない理由を上司に正しく伝える方法

コーチング・フィードバック

「この仕事やっておいて」上司からそういわれて、本当は断りたいのに…と思うこと、仕事をしている上で多々あるのではないでしょうか。やる気の起きない仕事を断れなくて、もう勢いで仕事を辞めてしまおうか…などと悩んでいるのなら、一度上司への伝え方を工夫してみてからでも遅くはありません。
ここでは「目の前の仕事にコミットできない理由を上司に正しく伝える方法」についてご紹介いたします。

エンプロイー・エンゲージメントとは

「エンプロイー・エンゲージメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。1990年に、ボストン大学心理学教授(当時)だったウィリアム・カーンという人の論文をきっかけに注目されるようになった言葉です。日本語で言うと「従業員の仕事への意欲・やる気」といった表現が近いかもしれません。

アメリカにおける近年の調査結果から、この「エンプロイー・エンゲージメント(以下従業員の仕事意欲)」が高いほど、個人の成績もさることながら、企業成績も上がり、チームの関係性、顧客満足度等多く面でプラスの作用が働いていることがわかっています。
一方で低下すると、個人・企業成績の低下や社員のストレスの増加等に繋がり、マイナス方面に大きく作用するといえます。

つまりやる気が起きない仕事を従業員が断れずやり続けると、ストレスが増えて会社を休んでしまったり突然辞めてしまったりと、大きな企業への損失になりかねないということに繋がる可能性があることが、調査結果からもわかっています。
今まさにそういった環境で悩み、この記事を読んでいるという人もいるのではないでしょうか。

仕事への意欲がわかなくなる理由とは

仕事への意欲がわかなくなる理由は人によって様々だといえます。プライベートなことが理由な人もいるでしょうし、そもそもの仕事の選択を間違えたということが理由だという人もいるかもしれません。

しかし、もし仕事への意欲低下が上司の対応に対する不満が原因であれば、部下であるあなたの働きかけ次第で、うまく状況を変えることができるかもしれません。なぜなら単純に上司はあなたがどう思っているかということを把握できていない可能性もあるからです。

基本的に上から下へのフィードバックというのはあるものですが、下から上に物申すシチュエーションというのはあまりありません。そのため、上司は自分がきちんとマネジメントできているかどうか、客観的に把握するという環境があまりない、という状況が背景にはあります。

かといって、直接的に「あなたのリーダーシップに問題があります」といった言い方は当然ながら角が立つので、状況別に上司に対してあなたの思いを伝える方法を次にご紹介いたします。

4つの状況別意欲がないときに上司にうまく伝える方法

①上司が仕事を渡したままサポートがないためやる気になれない

よくあるパターンとして、「これやっといて」といったが最後、何のフォローもない上司です。上司という立場は、仕事を振り分けるだけの仕事ではなく、部下のパフォーマンスを最大限に引き出すためにサポートをすることも重要な仕事です。もしそういった上司から仕事を渡されたときは、次のような言い方で上司に「自分も何か部下のために動かないといけない存在である」ということを自覚させましょう。

「その仕事を達成するには、サポートしていただきたいです」
「その仕事をするには〇〇(具体的な理由)をしていただけますか」
「現在他にも案件が並行しており、期日までに仕上げるためにお力を貸していただきたいのですが」

ポイントは、単に「できない」というのではなく、「こういった状況を整えてくれればできる」という言い方にする点です。

②同じような仕事ばかり渡されてやる気になれない

慣れている作業は楽ですが、人はずっと同じ作業ばかりをやり続けるとやる気がなくなるものです。「またこれか…」というような仕事ばかりを渡されて、自分の成長も感じられず、やる気が低下していく可能性があります。一方上司目線で考えると、習熟度の高い人に安心して任せたいという思いが背景にあるため依頼してしまうということがあります。

そういった時は、次のような言い方で伝えてみましょう。
「新しいことに挑戦してみたいです」
「この仕事ではここまでのことが十分できるようになったので、次のステップに進みたいです」
「〇年このことはやってきているので、次は〇〇のようなことができるようになりたいです」

ポイントとしては今渡されようとしている仕事へのやる気がないということを伝えるのではなく、もう十分習熟したため新しいことへの学びが欲しいということに焦点をあてて伝えるという点です。

③頼みやすいという理由で仕事が集中しやる気になれない

いつも自分にばかり仕事が渡されている気がすると感じる時があるかもしれません。上司も人間なので、無自覚に頼みやすい人に仕事を渡しているという可能性もあります。そういった状況では感情的にならず、論理的に伝えることが重要です。

「この仕事をやるのに自分の特性を考えたら適役かと言われると悩ましいです。」
「私の今までの経験を活かすとしたらこの仕事ではうまくいかせないような気がするのですが…」
「今後の私のキャリアを考えるとこの仕事が私にあっているのか自信がないのですが…」

「この仕事はやりたくない」というわけではなく今後自分がどうなりたいか、自分の特性がどうか、とういった具体的な理由をつけることがポイントです。ただ「私はこういった仕事がしたいからこの仕事はしたくありません」という言い方だと「やりたい仕事しかしない人」という見方をされてしまう可能性もあるので、できる限り具体的な自分のキャリアやありたい姿を明確にして話すことが必要となります。この言葉をきっかけに、あなたのキャリアについて上司と話をすることで、もしかしたら案外上司が考えて仕事を渡してくれていたという可能性もあるかもしれません。

④業務過多でこれ以上やる気になれない

部下の状況を把握せず案件を渡しているだけの上司のもとにいると疲弊します。仕事だからとすべて受けていると、体や心を壊す原因にもなりかねません。「今とにかく業務過多で疲弊している」というアラートを部下のほうからもアピールしましょう。

時に業務過多になるのは仕事上仕方がないこともありますが、常態化しているとなると大問題です。本来上司はそういった状況を調整することも仕事の一つなので、もしそのような状況で悩んでいるのなら次のような伝え方をしてみましょう。

「現在〇と〇と〇の案件が並行して動いており、業務過多の状況になっています。サポートしていただきたいのですが」
「今月の残業時間が〇時間となっており人事から忠告がきていたので、これ以上残業時間が増えないようサポートいただけるとできるのですが」
「先月の案件の売り上げを担保するのにこれ以上の案件が増えると、顧客へのフォローが手薄になり厳しくなりそうです。」

上司は具体的に何がどこまで忙しいのか、細かく把握できていない可能性があります。もし本当に相当な仕事量で疲弊しているのなら、人員を増やすなどの対策に動いてもらう必要があります。そのためには、具体的な理由が上司も必要となるため、部下としてもできる限り具体的に状況を伝える必要があるのです。

以上、目の前の仕事にコミットできない理由を上司に正しく伝える方法についてお伝えしてきました。基本的に上司は部下の状況を把握できていない、という前提のもと丁寧に話をするように心がけてみてください。

こういった働きかけをすれば動いてくれる上司もいれば、動いてくれない上司もいます。場合によっては言葉を選んで伝えたとしても「反論するのか」というようなネガティブな反応をする上司もいるかもしれません。

どうしても解決せず、目の前の仕事へのやる気が起きない場合は、無理にその職場にとどまる必要はないかもしれません。ただ勢いで辞めてしまう前に、一度上司に伝えるという働きかをしてから考えてみてください。まずは伝えることからが第一歩となります。