部下と面談をしたことはありますか?組織に所属し、部下を持つ上司の皆様やリーダーの方は面談をする機会は多いことだろうと思います。
部下を持つ方なら、部下の悩みの相談や社員の身上把握の為の面談など、一度は実施したことがあると思います。ほかにも休憩時にお昼ご飯を食べながら話を聞いたことや、移動の車の中で仕事について話したりと、部下をもつ上司の日常のそんな1コマも、組織の成果へ繋がると考えれば面談と言えるでしょう。ただ実際は簡単ではありません。「部下が思ったように動いてくれない」「仕事への意欲がない」「こちらの考えが伝わらない」こんな声がすぐに聞こえてきそうです。
でも、それは部下の能力が低いだけの問題ではありません。上司も面談の方法を間違っていないでしょうか?話の聞き方、質問の仕方、伝え方など「コーチング」という技法があります。このコーチングの技法を取り入れた面談が、今回ご紹介する「コーチング面談」。コーチング面談をうまく実施するコツを紹介していきますので、実際にできることから現場に取り入れてみてはいかがでしょうか?
1.コーチング面談とは
まずはコーチング面談についてご説明します。コーチング面談とは部下自身が考えることによって、成長していくことを目指す「人材育成」の場です。
コーチング面談を実施することで部下自身の力を引き出し、成長を支援していくのが目的ですので、上司側からの「こうしなければいけない」などの一方的なアプローチになることはまずありません。ここを間違えてしまうとコーチング面談として成り立たなくなってしまいます。
部下の成長が組織の成果に繋がることは、上司の皆様なら容易に想像ができると思います。コーチング面談はあくまで部下の成長を目指す場としっかり目的意識を持ち、実施しましょう。
2.コーチング面談に必要な3つのスキル
コーチング面談には柱となる「3つのスキル」があります。その3つとは、「傾聴」「質問」「伝える」の3つです。この3つのスキルを上司がしっかりマスターし、実践すれば、おのずとコーチング面談はうまく機能していくことでしょう。
では3つのスキルを順番に説明していきます。
①傾聴スキル
コーチング面談において最も重要なのがこの「傾聴」のスキルです。傾聴というと難しく聞こえますが、「聞く」スキルになります。部下を考えさせ、成長させるためのコーチングとは先にお伝えしましたが、この傾聴スキルを使い部下から話を引き出すことが土台となってコーチング面談が成り立ちます。
傾聴スキルは2つのポイントがあります。それは「聞き出す」「聞き切る」です。まずは「聞き出す」のポイントを押さえていきましょう。
「聞き出す」
聞き出すには、相手に話したいと思わせる必要があります。上司の皆様ならスピーチやプレゼン等の発表の場を経験されていることでしょう。どんな時に発表しやすかったでしょうか?聞き手から何かしらアクションがあると、話しやすかったという経験があると思います。
例えば、うんうんと頷いて聞いている人が目に入ったとき、しっかり目を見て共感の姿勢があるとき、相づちやオウム返しがあったとき。相手にしっかり聞いているという姿勢が伝わるだけで人はどんどん言葉が出てくるのです。
聞き出す姿勢をいくつか挙げると、「頷きの徹底」「アイコンタクト」「相づち」「オウム返し」があります。この姿勢をスキルとして意識して使えるようになりましょう。最初はぎこちないのかもしれませんが、慣れてくると意識しなくてもできるようになります。
「聞き切る」
これはそのままなのですが、途中で話を挟まないで最後まで話を聞くこと。当たり前のようで、意外とできていない方が多いように思います。例えば部下が話をしているときに、上司が「それはこうだよ」と勝手にまとめたり、「実際できないでしょ」と終わらせてしまったり。上司は経験や知識もあるので、上司からすればもう答えのでている話を部下がしてくることは多々あります。
しかし、そこで話を聞き切らないと、部下からは「話を聞いてもらえない上司」と認識されてしまうので注意が必要です。話を聞いてもらえない上司のレッテルを貼られては、話を引き出すというのはより難しくなってしまいます。
先にも述べたように、傾聴スキルは話を引き出すスキルです。引き出すことがコーチング面談の基礎になりますので、ここをしっかり押さえておくだけで、今までの面談よりも確実にレベルアップすることでしょう。
②質問スキル
次は質問スキルです。基礎は前に述べた傾聴スキルですが、聞き出すだけでは部下がスッキリするだけで終わる恐れもあります。あくまで組織としてコーチング面談をするわけなので、成長というゴールへ部下が向かえるように、考えさせ、気付きを与えなければいけません。それでは質問スキルのポイントを説明していきます。
質問には2種類あります。「情報収集型の質問」と「コーチング質問」になります。コーチング面談では後者のコーチング質問を使うことになりますので違いを理解し、質問を変えていきましょう。
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「情報収集型の質問」
「情報収集型の質問」とは自分のための質問になります。思い出してみて下さい。普段から私たちはほとんどが自分のために質問をしています。例えば、部下が問題を起こしたとします。上司である皆様は情報を収集するために部下に質問をします。それに対し部下は事実関係を説明します。これはもちろん必要ではありますが、部下がじっくり考えたりする場にはならないでしょう。
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「コーチング質問」
コーチング質問とは「具体的には?」「例えば?」「どうなりたい?」などの相手に考えさせ、気付かせるフレーズを使った質問になります。あくまで答えは部下から導き出すのが目的です。ただ気をつけたいのが、上司の求める答えになるように誘導することは避けましょう。そうなってしまうと部下の気持ちは一気に離れてしまうかもしれません。傾聴スキルでもあった、相づちや頷きにより話せる状態を作ってからのコーチング質問が効果的です。色んな質問のフレーズを考えて実践してみましょう。
③伝えるスキル
最後は伝えるスキルです。コーチング・フィードバック面談は引き出すことが重要ではありますが、成果へつなげる為には、こちらから伝えることも必要です。ただ傾聴スキル、質問スキルで基礎を固めたうえで、伝えるスキルを使い導いていくのが良いでしょう。相手の成長のためではありますが、最初から伝えることがメインになってしまうと部下から引き出すことができなくなってしまいます。それではコーチング・フィードバック面談は成り立ちません。伝えるスキルはコーチング・フィードバック面談の最後の武器に取っておきましょう。
それでは伝えるスキルのポイントを3つ述べていきましょう。
1.何を伝えるかを明確にする
まず1つめは、これから何を伝えるのかを明確にしましょう。話す内容が明確で、ゴールが見えると聞く側も要点を捉えやすいですし、聞くことに集中できます。その前に「アドバイスしてもいい?」等の聞く準備をさせるフレーズを入れるのも有効でしょう。
2.ほめ言葉を使う
特に悩んでいる部下は自己肯定感が低い場合もあり、「自分なんて」とそもそも成長を止めてしまっていることが多々あります。そんな部下には積極的にほめ言葉を取り入れてみましょう。
慣れないと上司側も上手くほめられないこともあると思いますが、ほめ言葉の力は意外に大きいものです。相手をやる気にさせることができたり、本人も知らない強みを自覚させることができます。なので、ほめ言葉を使う際には「会議の資料すごい良いできだったよ」「後輩への気遣いが良いよね」など具体的な言葉も入れてあげると更に効果が増します。
3.メッセージの主語を意識する
3つめはメッセージの主語を意識することです。「すごいね」「さすがですね」というメッセージは主語があなたです。悪くはないのですが、決めつけられているという印象や、自信がない部下は受け取りにくいかもしれません。メッセージの主語は伝える上司側です。「会議の資料すごい良いできだったよ。すごく使いやすかった」「後輩への気遣いさすがだね、見習わなきゃな」など主語を転換するだけで伝わる力が大きく変わることがわかりますね。
3.最後に
いかがでしたか。今までの面談は一方的だったと感じた上司の方もいるかもしれません。しかし、コーチング・フィードバック面談はスキルです。成果へと繋げられない部下は、もしかしたら能力は低いかもしれません。しかし、面談を実施しても部下の能力を引き出せていないのなら、上司であるあなたのコーチング面談のスキルが足りないのかもしれません。
コーチングスキルは学んで、実践することで誰でも身につきます。コーチングを上手くできれば、部下は「自分で考え、自分から動く」部下へと変貌を遂げるかもしれません。成果を出す手法として、ぜひコーチング面談を実践してみて下さい。