OKRが非常に有用なマネジメントツールであることを知っている人は多いと思います。しかし、知識と実践の間には大きな壁が立ちふさがっているのも事実でしょう。今回は、そうした壁をイメージするための設定事例について考えてみました。
1.OKRの設定の仕方
OKRは大きく目標と結果に分かれています。まずは目標を設定しましょう。目標については以下の4つを満たしていると良いとされています。
・野心的であること
・定量的であること
・期限が明確であること
・チームでアクションが可能であること
また、結果の設定については以下の4つを満たしている必要があります。
・計測可能で定量的
・目標が達成可能なもの
・目標を優先順位づけするもの
・困難であるが不可能ではないもの
早速ですが、OKRの設定事例を職種別に4つほど紹介したいと思います。
事例⓪事業部目標
目標(OBJECTIVE):ECサイトのMRR(月次売上)を前Q比150%アップ
結果(KEY RESULTS):
- アクティブユーザー数を◯○◯千人増やす
- 一人当たりの購買頻度を1.2回から.14回に伸ばす
- 1回あたりの購買金額を+3,000円アップさせる
事例①人事・教育マネジャー
目標(OBJECTIVE):従業員向けのエンゲージメントプログラムを6月までに実施
結果(KEY RESULTS):
- 3月までに従業員向けのサーベイとヒアリングの実施
- 4月エンゲージメントプログラムの戦略策定
- 5月に従業員向けのエンゲージメントイベントを実施
事例② 営業マネジャー
目標(OBJECTIVE):半期の間に新規顧客と見込み顧客の獲得
結果(KEY RESULTS):
- 6月までに新規獲得1億円を目指す
- 6月までに見込み顧客を3億円積み上げる
- 期間中常に見込み顧客が新規獲得顧客の3倍以上になるように積み上げる
- 見込み顧客から新規獲得までに30%以上遷移率を維持する
事例③ カスタマーサクセス
目標(OBJECTIVE):世界レベルのカスタマーサクセスチームを6月まで作る
結果(KEY RESULTS):
- カスタマーサクセス人員として5人を3月までに採用する
- 4月までに新人向けの教育プログラムを作成し、実施する
- 1ヶ月に1回以上チームビルディングのイベントや相互フィードバックの時間を作る
事例④マーケティングマネジャー: Youtubeを活用した動画視聴改善
目標(OBJECTIVE):1人当たりの動画視聴時間を増やす5月までに〇〇%増やす
結果(Key REsults):
- 合計視聴時間を毎日30分ずつ増やしていく
- Youtubeのネイティブアプリを2つリリースする
- 動画のロード時間を15%短縮する
事例⑤ 開発ディレクター:ゲームアプリ開発
目標(OBJECTIVE):日本一遊ばれるゲームアプリを開発する
結果(KEY RESULTS):
- ユーザーのアクティブ率50%以上維持
- アプリの稼働率30%以上維持
- 半年以内に新規機能を2つ拡張しリテンション率を上げる
- 自然流入で50%以上の獲得を目指す
2.優れたOKRの4つの特徴
4つの設定事例についてみてきましたが、優れたOKRには4つの特徴があるといわれています。
① 大局的視点と測定可能性を意味あるものとして繋ぎ合わせる
多くのビジネスにおいて目標はイメージ先行の定性的なものではないでしょうか。例えば、設定事例②や④を見ていただければわかると思いますが「日本一の」や「満足」といった言葉は、なんとなくイメージできるものではあるでしょうがそれがいったい何を指すのか明確ではありません。そこで、結果を測定可能なものとすることで大きな効果をもたらします。特に②において、アクティブユーザーを増やしていくことがかなり強調されているでしょう。つまり、この目標を設定した人は、「日本一」というのは「アクティブユーザー数」で決めているといえます。売り上げやダウンロード数ではないといえるかも知れません。
② 達成困難な結果をあえて設定する
全ての結果は達成が非常に容易なものであってはならないといわれています。例えば結果達成がすべて100%のような設定ではなく、いろいろ力を尽くしたが70%程度の達成率に終わったなどの場合です。これは、目標が非常に野心的なものであるためとも言えるでしょう。逆説的に言えば、もし仮に結果達成がすべて100%になってしまう様な目標は、そもそも野心的ではないといえるかもしれません。
③ チーム全員が結果にアプローチする
OKRはその目標達成に全ての人がアプローチする必要があると考えられています。つまり、チームや企業全体のマネジメントではなく、個々人のマネジメントとして作用するものであるということです。
④ OKRの達成具合が個々人の評価を決定するものでないことを知っている
OKRは非常に野心的で達成困難なものを設定し、それに向けてまい進するという仕組みです。ということは、100%達成が出来ないことが往々にして起こるということでもあります。この際に目標が達成できなかったからといって、強いマネジメントを行うことは、OKRの性質上非常におかしなことになってしまいます。そのため、OKRの達成具合と個々人の評価をある程度切り分ける必要が出てくるのです。
3.OKRと個々人の評価
OKRは日々の業務効率を高めるファクターとして非常に有用といえます。しかし、一方で、OKRが個々人の評価と結びつくことで、野心的な設定が難しくなってしまう場合があるのです。OKRはマネージャー・リーダーと、その他のチームメンバーや部下との効率的なコミュニケーションを促進する仕組みでもあります。OKRをただ導入するだけでなく、OKRを導入した後にどうなるのかということもしっかりと考えて進めていくことが重要です。