人事考課制度は、人事部や上司の業務範囲のものと捉えている方も多いかもしれません。近年では、社員の理解や参加のない人事考課は、その目的を果たせず機能しない傾向が強まっています。
「働き方改革」が政府主導の下で叫ばれている昨今、昔ながらの労働集約型の働き方とか異なり、生産性を重視した働き方を取り入れようと各企業が様々な取組みを公表、実施を進めています。また現代ではそれまで当たり前のように存在していた年功序列制度、終身雇用制度が見直され、個人の成果に基づいた評価制度を取り入れ始めた企業も少なくありません。
しかしながら、この急激な取組みの変化の流れの中で、これまでにはあまり日本で確認されることのなかった歪が生じそれが問題とっているケースも少なくありません。今回はその歪の1つとして考えられる「年下上司」「年上部下」という今までにはなかったギャップが生じた場合でもどのようにコミュニケーションをとっていけばいきいきと働ける環境作りができるのかについてご紹介します。
年下の上司がやってきた時、年上部下が考えるべきこと
急に配属されてきた新人が明日から私の上司、しかも一回り年下、、、あなたならどのように思いますか?
一番考えられるケースとしては、まずその新人の華やかな経歴を確認し、妬みが生じ、立場や給与に見合った働きが本当にできるのか試してやろうなどと息巻き、特に社内のことや仕事のことなど教えてあげることもせずに壁を作って敬遠してしまうことです。人間は感情で動く生き物。今まで会社一筋で築いた地位があっさりと抜かれしかも年下というのですから誰もが面白くはないはずです。
しかし、そんな時こそ冷静になり、どうすれば自分のために会社のためになるのか考えることが必要です。経営陣としては新人でしかも若手をいきなり重役に据えるのですからそれ相応の覚悟を抱いているはずです。またそれだけ期待を持っている部署と捉えています。そんな中で面白くないからと突き放し敵対視することが果たして一番良い選択なのかを考えるべきなのです。間違いなく言えることは、その年下の新人上司と協力して新たな成果を創出し会社に大きな貢献をしたならばそれはその新人上司だけでなく自分の評価にも繋がるということです。そして反対にその新人を蹴落として大した実績を上げさせることもなく失脚させることは部署全体の評価低迷に繋がり、自分の評価も相応にして下がるということです。
まずは表面的な部分の情報ではなく、その人自身を知ることに努める
ではどうすれば良いのでしょうか。
難しい、、、と思う方もいらっしゃるかと思いますが、実は簡単なことなのです。「その年下の新人上司を理解すること」これにつきます。ですが単に表面的な情報だけを知る、歓迎会を行うことで普段の年下上司を知ってみる、ということではなく、その年下上司の「奥行きを知る」ことが重要です。
「人の情報を知る」というのは「その人の人生を知る」ということです。
ですので、その新人上司が今までどんな人生を歩んできたのか、どんな学生時代を過ごしたのか、どんな社会人1年目を過ごしたのか、そして何故この会社に入ってきたのか、彼の人生=奥行きを知ることでその方を理解するのです。また当然ながら聞くだけでなくあなたも人生についてお話をしてあげて下さい。そうすることによりその人に共感し、また共通の話題が生まれ自然に話が深まり接していけるようになるため自然に一緒に働く環境が整っていくのです。
形式はどのような形でも構いませんが、できれば1人1人がじっくりとお互いに話せる環境を用意することが望ましいでしょう。
昨今では様々な企業が「1on1ミーティング」という手法を取り入れています。これはその名の通り1対1でお互いの心境や抱えている問題、実現したいビジョンなど語り合うことで共通理解を深めようという取り組みです。まだ実践したことのない方はこのような取組みを積極的に取り入れることも有効な手段の1つです。また逆に実践したことがある方も頻度や話す内容など、その数と質を見直すことで本当にお互いに共通理解を持てているのか考え改善していくのが望ましいでしょう。
年下新人上司の人生=奥行きを1人1人がしっかりと知ることで一体感を醸成する
これは職場内で1人だけ意識していても意味がありません。
一緒に働くことになる部署の全員がその意識を持ってその新人上司の人生を知ることが重要なのです。中には年下上司ではないという方もいるかもしれませんが、意識すべきことは一緒です。年下だろうと年上だろうとその人個人の人生を知るということを大事にしてチームが一体となって仕事に取り組む環境を作ることこそが会社にとってもメンバーそれぞれにとっても最適な職場環境とすることができるのです。
いままさに年下上司、年上部下という構図が問題になっている、もしくはこれから問題になる可能性が高いという方は、一度立場に関係なく、チームとして、会社として成果を創出していくために個人それぞれを知る努力をしてみてはいかがでしょうか。そうしてお互いの理解を深めていくことでいきいきと仕事に打ち込むメンバーたちと環境が形作られていくはずです。